2024年7月31日、「ストレージ解説ウェビナー ~ビジネスを促進させるModern Data Storageへの一歩~」を開催しました。デジタル化が進む昨今では「データ」が重要な鍵を握りますが、インテリジェントなデータインフラ企業であるNetAppはどのような価値を提供するのか。NetApp製品の強みや導入企業の取り組み、パートナー様からの評価など当日の講演内容をサマリーでまとめます。
ネットアップ合同会社 システム技術本部 CTO オフィス - APAC プリンシパルアーキテクト 竹谷 修一
NetAppの特長の1つは独自のストレージOS「ONTAP」であり、仮想化技術によるデータの柔軟なアクセス・管理のほか、圧縮・重複排除・暗号化、クラウド連携など多彩な機能を搭載しています。技術的な側面では、高速なデータの読み書きや耐障害性のために、「WAFL」という独自のファイルシステムが特長です。データ更新の際に同じディスクブロックを上書きせず、新規ブロックに追記を行う手法により、RAIDのパリティの再計算によるアクセス速度低下の回避、障害時などでのデータ消失の回避のほか、旧版のファイルシステムをいつでも参照できる、いわゆるスナップショットの実現につながりました。
WAFLの特長はSSDが主流になる現在もメリットがあります。SSDでは、実際の量よりも書き込み量が多くなる「書き込み増幅(Write Amplification)」処理や、書き込む領域が偏ってNANDフラッシュが摩耗するのを防ぐ「ウェアレベリング」を行います。しかしWAFLではデータ書き込みの際に、一度NVRAMに蓄積したうえで、既存ブロックを上書きせず新しい領域に書き込みをプロセスにより、上記の2つの処理の発生を少なく抑え、SSDの性能向上や長寿命化に貢献します。
こうした技術的な特長も踏まえ進化してきたNetAppのストレージでは、現在アンチランサムウェアといったデータ保護機能や無停止の増設・更新を可能にする運用性、クラウド接続といった機能や、データ可用性保証などさまざまなプログラムを提供し顧客のストレージインフラを強化します。
リンク&リンケージ株式会社 IT事業部 システム開発部 システム開発課 難波 毅 氏
リンク&リンケージは、オハヨー乳業を中核とする企業グループ内でIT領域を担っている会社です。これまでオハヨー乳業は、国内ベンダーのSANを共有ストレージとして採用し、その上で4台の汎用サーバーをファイバーチャネルで接続してHyper-Vの仮想環境上で8台の仮想マシンを稼働させていました。この環境上では、24時間無停止で運用される基幹システムが稼働しており、短時間で膨大なトランザクションや長時間のバッチも稼働していました。しかし2016年にホールディング設立に伴い戦略的なデータ活用が掲げられる中で、仮想化基盤のパフォーマンス不足が顕在化。さらに機能追加やデータ容量の増大によってバッチ処理の時間が伸長する課題に直面しました。こうして2018年に、既存のソフトウェア資産をそのままで、インフラをNetAppのAFFに刷新。結果としてバッチ処理の時間が2時間から30分に、設置スペース・電力・排熱は10分の1に削減されています。また、稼働してから6年間で障害は一度も発生していません。当初掲げた目標はすべて達成できています。
NetApp製品を運用する中で感じた印象としては、まず重複排除のおかげで性能劣化を回避できるため、想定よりも多くのグループの基幹システムを追加できたこと、システムの移行も簡単で障害も少なく運用負荷が楽になったことが挙げられます。
さらに、複雑なシステム環境やHyper-Vの仮想環境であっても、高いパフォーマンスを発揮できる点、標準搭載mp基本的なツールなどを用いて安定的に運用できています。当社では2022年にはNetAppのASAを追加で導入していますが、NetAppのストレージ製品はONTAPという共通の仕組みがあるので、異なるストレージ製品を導入しても扱い方の差異が少ないという点もメリットです。
成城大学 メディアネットワークセンター 課長 Japan VMUG Leader 五十嵐 一浩 氏
成城大学のメディアネットワークセンターでは、学生と教職員が利用する各種ITサービスを運営しており、その仮想化基盤として長きにわたって「VMware vSphere」を利用していました。しかし、BroadcomのVMware買収により同製品のライセンス料が値上げされ、年度始めであったことから追加予算の捻出が困難であり、既存のシステム構成を見直すことになりました。予算の都合上、今回はNFXを採用せずvSANのみを採用しましたが、当初予定したストレージ容量を満たすことはできないことが発覚。vSANアドオン購入するという選択肢もある一方、よりコストを抑えられる選択肢として採用したのが、NetAppのブロックストレージのASA A150でした。
実際にASAの導入にあたっては、推奨設定はNetApp側のドキュメントで整備されていることで確認しながらスムーズに進めていきました。設定では、iSCSIの設定、LUNの作成、データストアの作成などのさまざまな手順がありますが、大学の事務職員の私でも設定できるので、ASAは扱いやすい製品だと感じています。
今回、動作検証もいくつか行いました。新しい仮想基盤のVMを移行する際に必須のStorage vMotionを用いた移行、ネットワーク障害を想定したポートの閉塞、ボリュームの移動、コントローラのフェイルオーバーです。これらを実施する中では特に困った部分はなく、実際の運用にはほぼ影響がないことが確認できました。このようにNetAppのASAに関して、運用開始までの設定やさまざまな検証を行う中、導入後も若手にも運用を任せることができる製品だと改めて実感しています。
SB C&S株式会社 ICT事業本部 技術本部 技術統括部第1技術部 2課 河村 龍 氏
NetAppのSANストレージであるASAはハイパフォーマンスを強みとするAシリーズと、大容量・低価格を強みとするCシリーズの2種類が展開されています。SAN特化であるためことから不要な機能が排除されており、「高機能・高性能でありながら低コスト」を実現しています。ASAのメリットとしては、ONTAPが提供するStorage Virtual Machine(SVM)やセキュリティ、データ保護といった豊富な機能を利用できる点のほかに、障害が発生してもシステムを継続させる可用性の機能が搭載されています。その具体的な機能として、1つは自動フェイルオーバー機能をサポートしたレプリケーション機能である「SnapMirror active sync」、もう1つは「Persistent Port」という、障害が発生してもネットワーク断を検知することなくシステムを継続する冗長化機能です。実際にASAを用いた検証として、障害を発生させてPersistent Portの挙動を確認したところ、サーバーからは障害前と変わらない状態でネットワークを認識し、システム継続できることを確認しました。
株式会社ネットワールド マーケティング本部 セールスコンサルティング部 セールスコンサルティング2課 係長 成清 真素夫 氏
今回は、4体の物理的なサーバー上に構築されたWindows Server OSの8台の仮想マシンにIO負荷をかけて、当社開発の解析ツールを用いてASA A150とAFF A150の比較検証を行いました。検証はパフォーマンス検証のほか、障害を想定したコントローラー切り替え時の可用性検証を行いました。
パフォーマンスに関しては、両方がiSCSIプロトコルの場合、60秒間の平均IOPSはAFA A150はASA A150より1.1倍という結果になりました。AFA A150のプロトコルのみをNFSに変更した場合は、ASA A150のほうがAFA A150よりも2.5倍処理能力が高い、という結果が得られました。
コントローラー切り替え時間はASAの強みということもあり、ASA A150のほうがAFF A150よりも2倍以上切り替え時間が早いという結果が得られました。
NetAppのASAはAFFをSAN向けに特化させたストレージです。SANについて、物理接続のメディアとしてIPとSAN専用に、方式としてはSCSIとNVMeに分類できます。SCSIは、高速で広帯域というメリットがあるNVMeに取って代わられる傾向にあります。もっとも、ホストOSのサポートや用いられる用語の齟齬を懸念し、NVMeへの移行は時期尚早という考えもありますが、ASAを用いればNVMe移行テストや実際の切り替えをスムーズに行うことができます。ASAには、FC/iSCI・LUNとNVMe・namespace間での相互変換機能があります。実際に、その変換や検証を行う際には、SAN構成に関してさまざまな注意点があるので気をつける必要があります。
ASAによって既存のiSCSI/FC環境をNVMeに移行し、場合によってはFCスイッチをなくすこともできるかもしれません。ストレージ構成変更や移行時に大きなメリットがあります。
企業が扱うデータが増大する中、企業は限られたコストの中で最適なパフォーマンスを発揮でき、事業を止めない安定したストレージインフラが求められます。さらに運用管理者の負荷を低減できるかという点もポイントです。加えて、セキュリティ脅威に対応するサイバー レジリエンス、急速に進化するAIへの対応など様々な対応が今、求められています。ストレージインフラ、つまり鍵となる「データ」について、私達はインテリジェントなデータ インフラ企業としてデータ活用に関して様々なご提案をしていますので是非ご相談ください。
当日のセッションはこちらから視聴できます
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。