新しい時代に入った企業のAI活用,生成系AIの進化を支える最先端の開発技術とは
2024年4月9日、東京の二十五世観世左近記念 観世能楽堂で「NetApp AI Day」を開催しました。 日本の伝統芸能の舞台とAIという組み合わせは、既存社会と最先端技術の「融合」というビジョンを会場全体で表すものとなりました。 『データを制するものはAIを制す。AIを制するものはビジネスを制す』と題した本イベントでは、お客様の具体的なAI導入事例や、NetAppのAI担当者による最新テクノロジの紹介を通して、AIがもたらす新たな時代におけるデータ活用の最適解を提示しました。 本ブログでは、AI活用の最前線に立つスピーカーの講演内容をサマリーとしてご紹介します。
ネットアップ合同会社 代表執行役員社長 中島 シハブ・ドゥグラ
生成AIが登場して以来、その活用領域は広がり続けています。それはAI活用に欠かせないデータドリブンの世界でも同様です。データ活用におけるさまざま障害要因を乗り越えるためには、AIに対して一番正しいデータパイプラインを作ることが重要です。NetAppは「インテリジェントデータインフラストラクチャ」という概念のもと、データ管理をシンプルにし、サイロを作らず高パフォーマンスを提供し、AIに信頼できる安全なデータを提供することで、企業のAI活用を加速していけると考えています。
国立研究開発法人・産業技術総合研究所フェロー AI Japan 副会長 辻井 潤一 氏
大規模基盤モデルのコモディティ化や、スタティックなデータとリアルタイム情報の統合など、AIは今や少量のデータでも質や組み合わせ方で多様に活用できるものになってきています。さらに近年ではテキストデータをモデルとして使うChatGPTにより、人間の知識や解釈とデータを組み合わせ、AI自身がデータをうまく活用し必要な答えを導き出せる時代が始まっています。今後、日本ではコモディティ化したAIと良質なデータ活用が、さまざまな産業において競争力の源泉となることが期待されます。
NetApp Senior Director of Product Management AI Solutions, Russell Fishman
企業のAI活用には、データ管理のシンプル化、最高性能のデータアクセス機能、信頼できるセキュアなデータ環境が必要となります。NetAppはAIのスペシャリストとして、NVIDIAとの協業により、マルチクラウド、ハイブリッド環境をシームレスに統合し、サイロ化を促進せず、データ活用によるビジネス生産性を引き上げる「インテリジェント データ インフラストラクチャ」の提供を通して、企業のもっとも重要なデータ資産を活用するAIに必要なサポート性、管理性、拡張性、信頼性をご提供します。
ネットアップ合同会社 プロフェッショナルサービス本部 プロフェッショナルサービス AIコンサルタント 清水 優
増え続けるデータとストレージのサイロ化、社会的責任を果たすためのトレーサビリティ対応など、AIサービス事業者が向き合う課題に対し、NetAppは本来あるべきMLOpsを妨げるボトルネックを解消し、データサイエンティストの負担を軽減する、ストレージ統合管理SaaS「BlueXP」や、Pythonコードでデータ管理可能な「NetApp DataOps Toolkit」、さらにAIデータパイプラインの構築に必須となる柔軟なリファレンスアーキテクチャとなる「NetApp AI Control Plane」を提供し、「はやい」「安心」なMLOps基盤の実現を支援していきます。
株式会社Preferred Networks 計算基盤担当VP 土井 裕介 氏
LLMの登場でAIの変革期の第二段階を迎えています。深層学習は専門家の道具に過ぎなかったのですが、不可逆な変化が起こり、AIは一般の方も使えるツールになってきています。知的労働が変化し、AIと人の作業がそれぞれの特徴を活かして協調する時代になってきています。株式会社Preferred Networksでは、AIのBtoB向けソリューションを提供しており、そのインフラとして、100B/1Tパラメータからなるマルチモーダルな大規模基盤と、パフォーママンスと電力効率に優れた独自の計算基盤(MN-Coreシリーズ)を構築しています。深層学習、研究開発、シミュレーションにストレージを利用していますが、そこにNetApp ONTAPストレージを採用しています。我々が使うコンテナ エコシステムのKubernetesと親和性が高く稼働も安定しているため、パートナーやお客様が入るインフラとしても信頼できます。今後はさらに生成AIに適した次世代NM-Coreの開発とともに、安価で省電力なAIソリューションの提供に取り組んでまいります。
株式会社ゼウレカ 代表取締役社長 務台 明子 氏
三井情報株式会社 ソリューション第二技術本部 イノベーション推進部 部長 石原 慎也 氏
新薬を開発するには、現在では数百億円から数千億円の研究開発費が必要で、開発の成功率は30,000分の1、9-17年もの開発期間が必要だと言われています。ゼウレカでは、AIの技術を活用することで、これらの課題を解決し、創薬研究の大幅な効率化と成功率の改善に役立つソリューション、サービスを提供しています。Tokyo-1は、超高速な計算リソースを提供するもので、創薬業界、さらにはヘルスケア産業全体のDXを追求し、イノベーションハブの形成を目指して、HPC環境、創薬DXソリューション、情報コミュニティの三つのサービスを展開しています。Tokyo-1では、最先端GPUを搭載したAI対応のDGX H100と、多彩な用途をサポートし運用性も高いNetApp ONTAPを採用し、専用の占有テナントと共創用の共有テナントの併設、高度な研究開発が求める高速計算機能、リソースやボリューム追加の柔軟性、暗号化に加えネットワーク単位の分離技術を使ったセキュリティ環境など、製薬各社のニーズを実現し、今後も日本の創薬変革に取り組み続けていきます。
エヌビディア合同会社 Senior Manager of Developer Relations 鈴木 博文 氏
今後、生成AIの市場機会は急速に成長し、その恩恵はさらに多くの領域に広がるでしょう。そこにはAI基盤への十分な投資が求められます。我々はモデル、ツール、計算リソースを兼ね備えたNVIDIA AI Foundryや、AI開発プロセス全体を動かすソフトウェアをまとめたNVIDIA Inference Microservice(NIM)といったコンセプトの提案、またChatGPTをはじめ革新的な性能を生み出すトランスフォーマー技術による開発を支えるため、現行品の性能を遥かに凌ぐGPU「Blackwell」をリリースするなど、ハードとソフトの両軸から生成系AI開発の更なる進展に貢献するべく取り組みを続けています。
ネットアップ合同会社 ソリューション技術本部 AI Specialist SE 姜 謙次
生成AI基盤モデルと外部データを連携し回答精度を高め、実装も容易なRAGの活用が急増しています。一方で、迅速に利用開始できるクラウドのAI基盤モデルから自社の大容量データへのアクセス・連携にかかる時間や作業負荷は大きな課題です。NetAppのストレージはマルチプロトコルのアクセスによりデータをスムーズに収集できます。またスナップミラーはオンプレミスとクラウド上のONTAPストレージ間で迅速にデータを複製・同期し、データの自動階層化機能と共にAIワークロードの効率化とコスト最適化を実現します。この”軽やかさ”が生成AI活用を進展させるNetAppだけの提供価値です。
AIを取り巻く環境は既に新しいフェーズに入っています。
開発に必要なデータ量は加速度的に増加し、ChatGPTに代表される生成AIの性能も比例して飛躍的な向上を見せています。
一方で、AI活用のシーンはさらに価値が生まれる現場へと近づき、ユーザーが自分用のAIをカスタムして利用するなど、企業のビジネス競争力を左右するものとなっています。
そして、それらを支えるAI開発にも、単にマシンの性能向上だけではなく、データ資源の運用性、安全性、効率性、さらに優れたAIパイプラインの構築が求められています。
NetApp AI Dayでは、実例とともにさまざまな課題解決の糸口、取り組むべきテーマ、そしてNetAppのストレージ製品とテクノロジがAI開発やAI基盤モデルに提供できる価値をお伝えできたのではないかと思います。
クラウドでAI利用を始める、あるいはチューニングやフルスクラッチで自社AIを開発する、既に導入しているAIのデータ運用に課題がある、といった企業様は、ぜひ一度NetAppにご相談ください。
当日のセッションはこちらから視聴できます
業務執行役員 マーケティング本部長
日本ヒューレット・パッカード、日本マイクロソフト、F5ネットワークスジャパンなどでマーケティング業務に従事。2017年にNetApp入社。2024年2月より現職。