新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、社会や経済に大きな影響を与えています。企業は事業展開だけでなく、ITにおいても変革を迫られています。
企業を取り巻くリスク回避には、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)、あるいは自然災害に対するDR(Disaster Recovery:災害復旧)の対策があります。しかし、新型コロナウイルス感染症に関しては、当然のことながら自然災害とは別の考え方でとらえるべきであり、将来を見据えた変革を設計することが大切です。
新型コロナウイルスによる感染拡大の収束を見据えて、2つのフェーズにおけるIT変革と投資の在り方、NetAppが支援できる製品とサービスをまとめました。
まず、事業の継続性を考えたとき、新型コロナウイルス感染症のリスクは、地震などの突発的に引き起こされる自然災害とは異なることに留意すべきです。比較して違いを明確にします。
自然災害の対策は短期的かつ集中的に行うことがポイントですが、新型コロナウイルス感染症の対策は、短期的な対策はもちろん中⻑期です。さらに事業モデル自体を⾒直さなければならない場合がある点で、大きな違いがあります。事業継続の判断、営業時間の短縮、規模の縮小、閉鎖や別事業への転換などが必要になります。
新型コロナウイルス感染症への対応は、現在の「VSコロナ」が収束すれば「Withコロナ」と「Postコロナ」のフェーズ(局面)に入ることが想定されます。それぞれのフェーズで企業とIT部門で考察すべきことを整理します。
第1は、「Withコロナ」のフェーズです。感染状況を慎重に見極めながら、制限付きの経済活動が再開されます。ロックダウンによる感染状況の食い止めと、予防策やワクチンの開発次第かもしれませんが、2020年以降、2年間は続く可能性があります。
第2は、「Postコロナ」のフェーズで、有効性の高い予防策や治療法が確立され、本格的な経済活動が再開する時期です。しかし、一部の業界を除いてサプライチェーンの乱れや消費の落ち込みは続くでしょう。
Withコロナのフェーズでは短期的な施策、つまり業務継続と今後の成⻑に向けたコスト削減などが必要です。一方、Post コロナを⾒据えた場合には、中長期的に事業モデルやプロセス、事業の体制の⾒直しが必要になります。
差し迫ったリスクに対応することはもちろん大切です。しかし、混乱の時期にWithコロナもしくはPostコロナの見通しを立てることが、企業の存続にあたって重要になります。短期的、中長期的という複数のスコープ(範囲)からIT改革を考えなければなりません。
それぞれのフェーズにおいて、IT変革に対する考察と、NetAppが提供できるソリューションを提案します。
まず「Withコロナ」のフェーズですが、IT変革の側面では、業務継続に必要なリモートワーク環境の整備、キャッシュアウト抑制とコスト削減による最適化ソリューションが必要になります。新規投資は現状を維持して、定常的に発生する運用保守などの予算を削減する予算構成比率のイメージです。
例えば、リモートワーク環境の整備を例に挙げて、事業継続と成長に向けたコスト削減の面から課題とNetAppのモダンワークプレース ソリューションのメリットを解説します。
まず事業継続の側面では、「てっとり早く始めたい」「初期投資を抑えたい」「セキュリティが気がかり」という課題が考えられます。リモートワークでは当然ファイルのやりとりや保存が発生するため、ストレージも大きな要件です。
このときNetAppには、HCIやCloud Volume ServiceもしくはCloud Volumes ONTAPがあり、迅速な本格展開にも耐える性能と可⽤性を実現しています。クラウドのメリットとして従量課⾦による提供も可能で、コストを最適化できます。データバックアップに加えて、Cloud Insightsのようなツールやサービスでアクセス監査も行えます。
次に成長に向けたコスト削減戦略の側面では、「容量不⾜とはいえ追加の設備投資は難しい」「ハードウェア更改が必要だが、キャッシュアウトを抑えたい」「将来的なストレージ投資を考えて現在の妥当性を評価していない」という課題が考えられます。単純な設備の買い替えでは解決しない課題です。
NetAppのストレージ専用OSであるONTAPを中心にその他のソリューションでは、データの圧縮と重複排除、ストレージ階層化など、さまざまなコスト最適化の機能を備えています。
さらに多様な⽀払い⽀援プログラムがあり、買い取りやリース提供時のリースバック、⽀払猶予、従量課⾦などが利用できます。計画段階では、クイックアセスメントやビジネスケースとロードマップ検討⽀援を行うアドバイザリサービスで支援しています。
続いて、Postコロナでは、事業の成長を支えるITインフラの実現が重要になります。予算構成比率のイメージとしては、新規投資を増加させる一方で、定常的に発生する運用保守などの予算はWithコロナのフェーズで削減した実績を維持します。
Postコロナのフェーズで求められるIT投資としては、エッジからクラウドまでの統合、事業の変化に柔軟かつ迅速に対応可能なITインフラの構築が考えられます。
エッジコンピューティングの領域では、NetAppはONTAP Selectを提供しています。エッジデバイスやIoT機器、エッジサーバー、5Gなどの高速ネットワークといった最新の技術環境に最適なデータファブリックを実現します。
オンプレミスやプライベートクラウドのコアとして、データレイクや基幹業務システムの活用には、ストレージのFAS/AFF/ASA E/EF、SF、SGシリーズを提供しています。統合的なインフラストラクチャーをサポートするソリューションとしてNetApp HCI、FlexPodがあります。
クラウドの領域では、人工知能による機械学習やデータ分析、マイクロサービスによる開発手法やアーキテクチャ、DR環境の重視が予測されます。ハイブリッドクラウドとマルチクラウド化もさらに進展するでしょう。この領域に関してはNetApp Cloud Volumesで包括的なサポートが可能です。
最後に、WithコロナおよびPostコロナの時代にIT変革を行うための5つの領域と変革の概要を提示します。
⼈材
ノンコア業務は外部に委託し、コアな業務に人材をシフトすることが重要です。ITシステムのモダナイゼーション(近代化)を実現する推進チームを立ち上げます。
ガバナンス
IT基盤に関する調達、システム開発、運⽤と標準化など、新たなIT標準を整備し、既存の組織に浸透させます。配賦と直課でITコストの適正化を図ります。
セキュリティ
境界防御からゼロトラストにセキュリティの基本的な考え方を転換します。セキュリティポリシー策定とCSIRT(Computer Security Incident Response Team :インシデントに関する報告を受け取り、調査、対応する組織)もしくはSOC(Security Operation Center:常時ネットワークやデバイスを監視してサイバー攻撃の監視、検出と分析、対応を行う組織)を設置します。
システム
データのポータビリティを実現し、データの利用と活⽤を促進する共通基盤としてデータパイプライン、人工知能や機械学習の基盤、APIなどを整備します。
運用保守
標準化、⼯数削減、セルフサービス化を行います。品質向上を目的とした自動化、障害の発生から対応まで一貫したゼロタッチオペレーション実現などがあります。
Withコロナではシステムと運用保守に重点が置かれます。Postコロナではシステムと運用保守を基盤として、景気の回復を予測しつつ人材、ガバナンス、セキュリティに投資を行います。
NetAppではIT変革に対して、製品(プラットフォームとインフラストラクチャー)、計画段階、設計構築および移行段階、運用保守段階といったITのライフサイクル全体に渡ったサービスを提供します。
先行きの見えない時代ですが、だからこそWithコロナ、Postコロナのフェーズに視野を拡げて、どのようにITを変革していくか、投資のための予算を確保するか考えると、現在すべきことも明確になります。多角的な視点から整合性を検討し、ロードマップを作成するとよいでしょう。NetAppの製品やソリューションがIT変革を支援します。