最近の金融ITでは、FinTechの進化により決済、資産運用、融資など多岐にわたる分野で大幅な革新が進行しています。特にAI、ブロックチェーン、クラウド技術の活用が金融機関の効率化や新サービスの創出を支えています。実践的なIT基盤の構築と活用においては、各業種・業界向けに最適なソリューションの検討が必要です。•
2025年7月17日に開催されたイベント「NetApp INDUSTRY SUMMIT FINANCIAL SERVICES」では、金融業界のユーザー企業やパートナー企業が集い、NetAppのFinancial Services Specialistから金融業界の変革について、事例を交えながらメインフレームデータの戦略や未来、金融ITにおけるデータ活用を全方位的にご理解いただけるコンテンツを紹介しました。当日の講演内容をサマリーでまとめます。
NetApp金融サービス業界担当ゼネラルマネージャー Peter Dean
28年間にわたるWells Fargoでの経験を活かし、現在は銀行・保険・資本市場における課題解決と成長支援に取り組んでいます。彼の講演では、金融業界が直面する課題と、それに対するテクノロジーの役割について多角的に語りました。
顧客の信頼とデータの扱い
NetAppが実施した調査によると、「銀行にお金を預けることに信頼を感じる」と答えた人は95%にのぼる一方で、「銀行に自分のデータを預けることに信頼を感じる」と答えた人は66%にとどまりました。これは、金融機関がデータの取り扱いにおいて、さらなる信頼構築が必要であることを示しています。
金融業界の課題を「3つのC」で整理します。
テクノロジーが果たす役割
NetAppは、以下の3つの観点から顧客のビジネス成果を支援しています。
事例紹介:SANアーキテクチャの導入事例
NetAppのSAN(Storage Area Network)ソリューションは、世界中の金融機関で導入され、さまざまなユースケースに対応しています。
インドの大手銀行におけるUPI対応
NetAppは、インドの大手銀行において、リアルタイム決済(UPI)に対応するためのプライベートクラウド基盤を構築。1日あたり3億5000万件以上のトランザクションを、サブミリ秒のレイテンシで処理可能にしました。可用性・スケーラビリティ・パフォーマンスを重視した設計により、信頼性の高い金融サービスを実現しています。
他の銀行でのSAN導入事例
3拠点間のディザスタリカバリ構成:インドの別の銀行では、4ノードのオールフラッシュシステムを各データセンターに配置し、ストレージベースのレプリケーションでほぼゼロのRPO(復旧時点目標)を実現。
不正検知・リスク管理・モバイルバンキング:大規模なワークロードだけでなく、小規模なユースケースにもSANは活用されています。
ハイブリッド構成:SANとNASを使い分けることで、柔軟なデータ管理を実現している顧客も存在します。
プラットフォーム・サービスやサイバーセキュリティの事例
NetAppは、ストレージだけでなく、開発環境やセキュリティ分野でも金融機関を支援しています。
Platform as a Service(PaaS):スケーラブルで安全かつコスト効率の高い開発環境を提供。新サービスの迅速な市場投入を可能にし、競争優位性を確保。
サイバーセキュリティ強化:
NetAppが選ばれる理由
NetAppは、スピード・セキュリティ・可用性・スケーラビリティを兼ね備えたソリューションを提供し、金融業界の進化を支えています。グローバルな事例と実績を活かし、日本市場においても最適な提案が可能です。
ネットアップ合同会社 ソリューション技術統括本部 第二技術本部•
ソリューションエンジニア 山本 裕之 / 外山洋一•
急速に進むデジタル変革の波は、金融業界にも大きな影響を与えています。顧客ニーズの多様化、競争の激化、そして規制の厳格化に対応するため、金融機関はシステムのモダナイゼーション(近代化)を急務としています。NetAppが提供するコンテナソリューションが、金融ITの変革にどのように貢献しているのかを、実際の事例を交えてご紹介します。
コンテナ活用がもたらす価値
NetAppは2015年からクラウドネイティブ技術の推進団体「CNCF」に参加し、Kubernetes環境における永続データ管理の分野で先駆的な取り組みを続けてきました。特に、弊社の「Trident」は、KubernetesやOpenShiftといったコンテナオーケストレーション環境と、オンプレミスおよびクラウドのストレージをシームレスに接続する役割を担っています。
このTridentを活用することで、以下のようなメリットが得られます:
金融業界での導入事例
1. 国内銀行:勘定系システムのモダナイゼーション
ある国内銀行では、メインフレームで処理された取引データをオープン系システムに転送し、さらにコンテナ基盤上で分析・開発に活用しています。
NetAppのストレージとTridentを活用することで、以下を実現しました
スイス・ポストファイナンス:高可用性と高速開発の両立
スイス郵便の金融部門では、コアバンキングシステムをコンテナ化し、NetAppのストレージを採用。Tridentによるデータ管理の自動化に加え、MetroCluster IPを活用した完全同期システムにより、RPOゼロの高可用性を実現しています。
2. コンテナ時代のデータ保護と事業継続性
近年では、コンテナ内で仮想マシンを動かすユースケースも増加し、データ保護の重要性がさらに高まっています。NetAppは、CSI(Container Storage Interface)では提供されない高度なデータ保護機能をTridentに統合し、以下のようなニーズに対応しています:
導入支援と今後の展望
初めてコンテナ環境を導入する企業向けに、設計・構築支援を行うプロフェッショナルサービスも提供しています。豊富な実績と技術力を活かし、金融業界のモダナイゼーションを強力にサポートしています。
NetAppは、コンテナ技術の黎明期から取り組んできたストレージベンダーとして、金融業界におけるシステムの近代化を支える強力なパートナーです。Tridentを中心としたソリューションは、スピード・柔軟性・信頼性を兼ね備え、今後の金融ITの基盤としてますます注目されることでしょう。
NetApp金融サービス業界担当ゼネラルマネージャー Peter Dean
なぜ今、メインフレームの見直しが必要なのか?
メインフレームは、長年にわたり金融業界の基幹インフラとして、信頼性・処理能力・セキュリティの面で圧倒的な存在感を放ってきました。特に、月末の勘定照合やリアルタイムの口座残高処理など、ミッションクリティカルな業務においては、今なお多くの金融機関がメインフレームに依存しています。
しかし、以下のような構造的課題が、メインフレームの将来性に疑問を投げかけています:
モダナイゼーションの本質:メインフレームを「捨てる」のではなく「活かす」
NetAppが提案するのは、メインフレームを完全に廃止するのではなく、そこに蓄積された「価値あるデータ」を取り出し、より柔軟でコスト効率の高い環境で活用するというアプローチです。
この戦略の中核を担うのが、1,NetAppのオブジェクトストレージ「StorageGRID」と、2,BMC(旧Model9)のソリューション「AMI Cloud」です。
1. NetAppのアプローチ:データを「取り出し」「活かす」
NetAppは、BMCとの連携により、メインフレームからデータを安全に取り出し、オブジェクトストレージ(StorageGRID)やクラウドに格納することで、以下のような価値を提供します。
クリック課金やテープ保管のコストを削減
StorageGRIDへの移行により、最大4倍のバックアップ速度を実現
DevOps環境での迅速なアプリ開発・テストが可能に
AIモデルへのデータ供給により、信用スコアリングや不正検知を強化
Immutable(改ざん不可)なバックアップでランサムウェア対策を強化
災害時の迅速なリカバリを実現(AMI Cloud Vault)
若手技術者が扱いやすい環境にデータを移行し、スキルギャップを解消
2. AMI Cloudとは?3つの柱で支えるデータ活用基盤
BMCが提供する「AMI Cloud」は、メインフレームデータをクラウドやオブジェクトストレージに移行するためのソフトウェアです。以下の3つの機能で構成されています:
テープの代替としてのバックアップ、アーカイブ、災害対策を実現
最大4倍のバックアップ速度、テープコストの大幅削減
サイバー攻撃対策用の「ゴールドコピー」を保持
改ざん不可能なバックアップ、暗号化通信、ゼロデータロスを実現
マーケティングや業務改善に向けたデータ活用を支援
データサイロを解消し、リアルタイム分析やAI活用を可能に
導入事例:世界の金融機関が実感するROI
スイス政府系IT機関
3か月で導入完了、年間コストを約50%削減(約21万8000ドル)StorageGRIDを活用し、オンプレミスでの安全なデータ活用を実現
アフリカの大手銀行
バックアップ速度4倍、データ保護コスト50%削減、AI活用と災害対策の両立を実現
導入事例:StorageGRIDのユーザ事例
北米のグローバル銀行
データレイクのモダナイゼーションを推進、リアルタイムの信用判断・不正検知・クロスセル分析に活用
ラテンアメリカの金融機関
AIによる不正検知を目的にStorageGRIDを導入、AWSとの連携により、クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境を構築
メインフレームからの脱却ではなく、「共存と進化」
NetAppとBMCの連携により、メインフレームのデータを安全に、かつ柔軟に活用できる環境が整いつつあります。これは単なるITの話ではなく、以下のようなビジネス成果に直結する戦略です:
未来の金融ITは「データの自由化」から始まる
メインフレームは、今後も一定の役割を果たし続けるでしょう。しかし、そこに閉じ込められたデータを「解放」し、AIやクラウドと連携させることで、金融機関は新たな競争力を手に入れることができます。
NetAppは、BMCとの強力なパートナーシップを通じて、金融業界のモダナイゼーションを支援します。インフラの柔軟性と、メインフレームの堅牢性を両立させるこのアプローチこそが、次世代の金融ITの鍵となるのです。
NetAppは、金融業界が直面する変化と課題に対し、どのように我々のテクノロジーが貢献できるかを多角的にご紹介しました。SANアーキテクチャによるリアルタイム決済基盤の構築、コンテナ技術を活用した開発・運用の効率化、そしてメインフレームデータのモダナイゼーションによるAI活用の加速。これらはすべて、金融機関が「信頼」「競争力」「規制対応」という3つの軸を強化し、持続可能な成長を実現するための具体的なアプローチです。
NetAppは、単なるストレージベンダーではありません。私たちは、データの価値を最大限に引き出すための「戦略的パートナー」として、金融業界の皆様と共に歩んでいきます。オンプレミスからクラウド、メインフレームからAIまで、あらゆるIT環境において、柔軟性・拡張性・セキュリティを兼ね備えたソリューションを提供し、変革を支援します。
未来の金融ITは、「データの自由化」と「俊敏な意思決定」によって形作られます。NetAppは、グローバルでの豊富な実績と革新的な技術力を活かし、日本の金融業界におけるモダナイゼーションをこれからも力強く支援してまいります。
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。