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AI時代のデータ戦略とサイバーレジリエンス 米国事例から学ぶ未来のIT基盤

 : セミナーレポート

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庄司 知代 (Tomoyo Shoji)
庄司 知代

NetAppは、AIの進化がもたらすデータ管理とセキュリティの変革に対応するため、官公庁IT担当者の方々に向けて主催:ネットアップ合同会社、後援:在日米国大使館にてセミナーを実施しました。本セミナーでは、NISTフレームワークを踏まえたAI時代に求められるデータインフラのあり方を、東京大学大学院・江崎教授による特別講演で解説。さらに、米国政府機関でのAI活用事例や、次世代インテリジェントデータ基盤のユースケースを、NetAppに加え、NVIDIA、シスコシステムズが紹介します。

特別講演:AI 時代の国家データインフラとサイバーレジリエンス  〜NIST Cyber Security Framework を踏まえて〜

東京大学大学院情報理工学系研究科教授 江崎浩 氏

政府・行政機関におけるデジタルインフラのあり方、AI時代におけるセキュリティと信頼の設計についてご紹介いたします。

AIは『素直』な存在です

AIは忖度しません。与えられたデータをそのまま処理するため、誤ったデータを与えれば誤った判断をしてしまいます。つまり、AIの精度は入力されるデータの正確性に大きく依存しています。実際、大塚商会では1993年に全社データベース化を完了し、「報告書に嘘を書くな」というポリシーを徹底したことで、AI活用に成功しています。正しい情報を蓄積することが、AI時代の競争力の源泉であると強調されました。

ゼロトラストという考え方

次に紹介されたのは「ゼロトラスト」というセキュリティ設計思想です。これは「誰も信用しない」ことを前提にしたシステム設計であり、信頼できる“トラストアンカー”を基点に判断を行うという考え方です。

霞が関のような複雑な組織においては、無条件の信頼ではなく、構造的な信頼設計が求められます。「優秀な人ほど人を信用しない」と述べられ、ゼロトラストの思想が現代の行政において不可欠であることが示されました。

レジリエンスは『人』がつくります

AIがどれほど進化しても、予期せぬインシデントに対応するのは人間です。「育てるのは難しいから、経験者を連れてきた方がいい」との見解が示されました。経験と判断力を持つ人材の確保が、組織のレジリエンスを高める鍵となります。

アサヒビールのインシデント事例では、バックアップが不十分だったために、20年前の手作業に戻らざるを得なかったという話が紹介されました。これは、事前の準備と設計がいかに重要かを示す象徴的な例です。

調達にも『信頼』が必要です

TSMCがランサムウェア攻撃を受けた後、全納品者にサイバーセキュリティ基準を義務化したように、今や「セキュリティ」は調達条件の一部となっています。製品だけでなく、製造元の体制まで問われる時代です。

デジタルインフラは『電力』に依存しています

AIは膨大な電力を消費します。つまり、エネルギー安全保障がデジタル戦略の根幹にあるのです。「AIはエネルギーがなければ動かない」と述べられ、電力インフラの整備が国家戦略として重要であることが強調されました。

アメリカがエネルギー自給自足を誇る背景には、デジタルインフラの安定運用があります。これは、AI時代の“見えない戦略”とも言えるでしょう

AIは便利ですが、万能ではありません。だからこそ、正しいデータ、信頼できる人材、そして“予期せぬ事態”に備えるレジリエンスが必要です。

本講演では、AIと人間の役割分担、信頼の設計、そしてサイバーセキュリティの本質について、皆様に多くの示唆をお届けできたのではないかと考えております。今後の行政・企業活動において、こうした視点がより一層重要になってくることを願っております。

生成AIが変える政府・行政機関の未来 ~現場で始まる実装と進化~

エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 シニアマネージャー パブリックセクタービジネスデベロップメント 森川 雅晴 氏

米国政府における生成AIの活用
米国政府では、生成AIの導入が進んでいます。スケールAIが開発した特化型LLM「Defense LLaMA」は、オープンソースのLLaMA 3をベースに、規則や業務知識を学習させたモデルで、精度向上を目的として活用されています。

また、マイター社が展開する「Federal AI Sandbox」では、弊社のGPUサーバーを数十台並べて構築したオンプレミス環境を活用し、機密性の高いデータや政策判断に関わる検証を安全に行う取り組みが進められています。

NVIDIAの技術と支援体制

弊社はGPUを中心としたハードウェアに加え、AIやデジタルツインの提案活動も行っています。メラノックス社の買収によりネットワーク技術も強化されており、CUDAというアクセラレーテッドライブラリや、各種アプリケーションフレームワークを通じて、AIの最適化を支援しています。さらに、NetAppのようなストレージベンダーとの連携も重要です。AIトレーニングでは大量のデータを高速かつ安定的に処理する必要があり、高性能なストレージは不可欠です。

開発支援とフレームワーク

弊社の「Nemoフレームワーク」は、生成AIの開発に必要なデータ収集、前処理、トレーニング、ファインチューニング、推論環境への展開までを一貫して支援するコンテナ型のツールです。

また、「NIM」マイクロサービスを活用することで、SwallowやGPT-OSSなどのモデルを迅速にデプロイすることが可能です。これにより、オンプレミス環境でも短時間で高性能な推論環境を構築できます。

リーズニングモデルと応用

リーズニングモデルは、文脈理解や根拠づけを可能にする技術で、意思決定支援エージェントの構築に活用されています。弊社では、ユースケースに応じた設計図(Blueprint)を提供しており、PoCの立ち上げをスムーズに進めることができます。

例えば、複雑なルールや過去事例を照合して判断を下すような審査業務では、AIの導入により属人的な判断を減らし、業務の効率化が期待されています

AI時代のデータセキュリティとサイバーレジリエンス

シスコシステムズ合同会社 クラウド・AIインフラストラクチャ事業 ソリューションズエンジニアリング部 ソリューションアーキテクト 加藤 久慶 氏

AI対応データセンターの課題

AIの精度はデータの質に左右されます。データを一箇所に集約するだけでは不十分であり、複数のデータセンターを活用する分散型の構成が求められます。その際、セキュリティ対策は欠かせません。

セキュリティの考え方とゼロトラスト

AIに関連するセキュリティ課題は多岐にわたります。従来の境界型防御では対応が難しく、NISTが提唱する「AIリスクマネジメントフレームワーク」や「ゼロトラスト」の考え方が重要です。ゼロトラストは「誰も信頼しない」ことを前提にしたセキュリティモデルで、パスワードだけに頼らず、マルチファクター認証やデバイス認証を組み合わせた認証基盤の整備が必要です。クラウドとオンプレミスをシームレスにつなぐAI環境の構築にも適しており、働き方改革やハイブリッドワークの進展に対応できます。

米国政府の事例

米国政府では、ゼロトラストの考え方に基づいたセキュリティ対策が複数の省庁で導入されています。VPN装置に加え、ファイアウォール、認証基盤、脅威検知システムなどを組み合わせた多層的な防御体制が構築され、ネットワークのフロー情報を分析してマルウェアの兆候を検知する仕組みが整備されています。

また、マイクロセグメンテーションにより、ネットワーク内のセグメントごとにアクセス制御を行い、感染時の影響範囲を最小限に抑える工夫もされています。これらの取り組みは、AI活用業務の安全性を高め、柔軟なアクセス環境の実現にも貢献しています。

シスコの取り組み

シスコでは、AIインフラに必要なサーバー・ネットワーク・ストレージを組み合わせた製品を提供しています。NVIDIAのGPUやフレームワーク、NetAppのストレージと連携し、包括的なAIインフラを構築できます。セキュリティ面では、脅威検知、バックアップ連携、可視性の強化など、さまざまな機能を備えたソリューションを展開しています。AIデータセンターのネットワーク構築において、ゼロトラストの考え方を取り入れることが重要です。

次世代データ基盤を支えるインテリジェントデータインフラストラクチャ

ネットアップ合同会社 ソリューション技術統括本部 公共技術本部 本部長 中川 拓也

中央省庁や地方自治体を担当するSEとしての視点から、AI時代に求められるデータ管理の在り方と、米国政府機関での導入事例を交えて紹介。

ストレージからデータ活用へ

NetAppは、従来「ストレージの会社」として知られていましたが、現在ではデータの保存・活用・保護を支えるインフラの提供に注力しています。AIが価値あるアウトプットを生み出すためには、まず価値あるデータの存在が不可欠です。分散した多様なデータを効率的に収集・保存・管理し、AIに活用できる形で提供することが、AI導入の成否を左右します。

次世代データ基盤を支えるインテリジェントデータインフラストラクチャ

ネットアップ合同会社

中央省庁や地方自治体を担当するSEとしての視点から、AI時代に求められるデータ管理の在り方と、米国政府機関での導入事例を交えて紹介。

ストレージからデータ活用へ

NetAppは、従来「ストレージの会社」として知られていましたが、現在ではデータの保存・活用・保護を支えるインフラの提供に注力しています。AIが価値あるアウトプットを生み出すためには、まず価値あるデータの存在が不可欠です。分散した多様なデータを効率的に収集・保存・管理し、AIに活用できる形で提供することが、AI導入の成否を左右します。

AI導入の課題とデータインフラの役割

AIを実証実験から本格運用へと移行する際、最も大きな障壁となるのが「必要なデータを、必要な時に、必要なだけアクセス・提供できるか」という点です。多くのプロジェクトがこの段階で頓挫してしまう現状があり、NetAppはこの課題に対して、オンプレミス、クラウド、専用クラウドなど、さまざまな環境に対応したシームレスかつ安全なデータ管理アーキテクチャを提案しています。

米国政府機関での導入事例

米国では、NetAppの製品が連邦政府機関をはじめ、国防総省や研究機関などで広く活用されています。

  • 国防総省

    厳格なセキュリティ要件に対応するため、国防総省からの要望を受けて開発された機能が製品に実装されており、これらは一般企業にも展開されています。ゼロトラストモデルに基づいたデータインフラの構築支援も行われており、分散されたデータ拠点を統合し、安全かつ柔軟に活用するためのアーキテクチャ設計を支援しています。

  • ローレンス・リバモア国立研究所

    同研究所では、マルチプロトコル・マルチテナント対応のストレージを活用し、研究室ごとのデータ管理とセキュリティを両立。7ペタバイト以上のデータ容量を運用し、AI研究の基盤として機能しています。

  • 連邦航空局(FAA)

    閉じられた環境下でのAI活用事例として、ヘリコプターや小型航空機のセンサーデータを収集・分析し、予防保全に活用。効率性とスケーラビリティを両立したAI環境の構築を支援しています。

ランサムウェア対策とレジリエンス

AI環境において、データの安全性は極めて重要です。NetAppは、ストレージレベルでのランサムウェア対策機能を提供しており、悪意のあるファイルの書き込み防止、管理者による改ざん防止、AIによる攻撃検知と即時バックアップなど、復元力(レジリエンス)を重視した設計となっています。

NetAppのAI活用データインフラに関する実績

NetAppは、AI活用に最適なデータインフラの構築を支援するパートナーとして、国内外の政府機関や企業に対して、豊富なノウハウと技術を提供しています。AI時代において、信頼性・安全性・拡張性を兼ね備えたデータインフラの整備は、今後ますます重要になると考えられます。

官公庁横断で考えるAI活用とサイバーレジリエンスの未来

ラウンドテーブルでは、AI活用とサイバーレジリエンスをテーマに、ネットアップ合同会社 AI・DX戦略事業開発センター長 脇 昌弘が司会を務め、講演者及び参加者と共に行われました。現場の課題や最新の取り組みが共有され、今後の方向性について、活発な議論が交わされました。

特許庁や文部科学省などからは、AI導入における現場のリアルな課題が共有されました。特に「未公開情報を扱う環境で、どのようにAIを活用するか」という点は、多くの省庁に共通する悩みです。

クラウド環境の利便性と、閉じたネットワークのセキュリティの間で揺れる現場。例えば、特許庁では生成AIの実証フェーズに入る計画があるものの、情報の秘匿性が高いため、クラウド活用には慎重な姿勢が求められています。

一方で、文科省からは大学が抱える膨大な研究データの活用についての課題が挙げられました。ゲノムデータや衛星データなど、ペタバイト級の情報をAIで処理するには、アーキテクチャの見直しと予算制度の改革が不可欠です。

サイバーレジリエンス:防御から復元へ

セキュリティ対策は「防ぐ」だけではなく、「復元する」力も求められます。特に医療機関では、ランサムウェアの被害が深刻化しており、厚労省からは「予算がついても現場での実装が追いついていない」という声も。

ゼロトラストの考え方や、ネットワークのセグメンテーション、AIによる脅威検知など、技術的な解決策は存在しますが、導入には組織的な意思決定と調達条件の見直しが必要です。

官民連携とグランドデザインの必要性

議論の中で繰り返し強調されたのは、「縦割り構造の打破」と「インセンティブ設計の重要性」です。AIは忖度せずに事実を提示するツールであり、心理的安全性を担保する存在にもなり得ます。

アメリカの事例では、政府技術者が自ら手を動かし、トライアル&エラーを繰り返すことで、柔軟な基盤整備が進んでいます。日本でも、こうした基盤づくりと人材育成が急務です。

縦割りを超えてつながる

今回のラウンドテーブルは、省庁間の連携や現場主導の取り組みの可能性を感じさせる場となりました。AIとサイバーレジリエンスは、行政・教育・医療・交通など多くの分野に関わる共通課題です。今後もこうした対話の場を通じて、現場の声を政策や技術開発に反映させていくことが期待されます。

まとめ

イベント後の情報交換会では、個別相談や今後のワークショップ開催に向けた話も進みました。

AIを活用するためには「安全で信頼できるデータ基盤」が欠かせないことを改めて確認できました。分散しているデータをどうまとめ、セキュリティやレジリエンスをしっかり確保するかが大きなポイントです。また、クラウドとオンプレミスを組み合わせた柔軟な仕組みやゼロトラストの考え方も重要だという声が多く挙がりました。

こうした課題を一緒に解決しながら、AI時代にふさわしい環境を整えていくことが、これからの大きなテーマです。

NetAppは、皆さまの取り組みを支えるパートナーとして、安心してデータを活用できる仕組みづくりをお手伝いしていきます。

庄司 知代 (Tomoyo Shoji)

庄司 知代

2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。

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