AWS Summit Japan 2026 フォローアップセミナー開催レポート


2026年7月16日、NetAppは「AWS Summit Japan 2026 フォローアップセミナー」を開催しました。本イベントでは、「AI活用を加速させるデータ保護とランサムウェア対策」をテーマに、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社、トレンドマイクロ株式会社、ディープインスティンクト株式会社、株式会社ネットワールドの各社をお迎えし、AI時代に求められるデータ基盤のあり方と、その基盤を支えるセキュリティ、運用自動化、クラウド活用について講演を行いました。
生成AIの活用が本格化する中、多くの企業が直面しているのは「AIを導入すること」ではなく、「既存の企業データをどのように安全かつ効率的に活用するか」という課題です。企業が保有するデータの大部分はファイルサーバーやNAS上に存在する非構造化データであり、その価値を引き出すことが競争力強化の鍵となっています。
最初のセッションでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の佐藤真也氏より、「Amazon FSx for NetApp ONTAP のアクセシビリティを振り返る」と題した講演が行われました。
Amazon FSx for NetApp ONTAP(以下FSx for ONTAP)は、NetApp ONTAPの豊富なデータ管理機能をAWSのフルマネージドサービスとして利用できるストレージサービスです。Windows、Linux、macOS環境からの利用に加え、SMB、NFS、iSCSI、NVMe/TCPなど複数のアクセスプロトコルに対応しており、既存システムとの高い親和性を実現しています。

講演では特に「Amazon S3 Access Points for FSx」に注目が集まりました。この機能により、FSx for ONTAP上のファイルデータをS3 API経由で利用できるようになります。従来はAIや分析基盤で利用するためにファイルデータをS3へコピーする必要がありましたが、S3 Access Pointsを活用することで、データ移動を伴わずにAmazon Bedrock、Amazon SageMaker、Amazon AthenaなどのAWSサービスから直接アクセスできるようになります。
また、SnapMirrorによるオンプレミスとのレプリケーション、FlexCacheによるクラウドバースト、マルチAZ構成による高可用性など、FSx for ONTAPが単なるストレージではなく、ハイブリッドクラウド時代のデータハブとして機能することが紹介されました。
続いて、トレンドマイクロ株式会社の大守哲広氏より、「AIを安全に使い続けるために -AIセキュリティとデータ保護の統合アプローチ-」について講演いただきました。
講演では、AIセキュリティには「AIを使う側(AIサービス利用環境)」と「AIを作る・構築する側(AI開発環境)」という2つの視点があり、それぞれ異なる課題と対策が必要であることが示されました。
近年、生成AIやエージェント型AIの利用が急速に拡大する一方で、承認されていないAIサービスへの機密情報の入力や、シャドーエージェント、AIエージェントへの不正な指示など、従来とは異なるセキュリティ課題が顕在化しています。講演では、AIを活用する組織に求められる対策として「可視化と把握」「リアルタイム保護」「統合運用」の3つの柱が示され、AI Secure AccessおよびCyber Risk Exposure Managementにより、利用AIサービスの可視化からアクセス・入出力制御、リスク評価までをTrendAI Vision One上で一元的に実現できることが紹介されました。
一方、AIを作る・構築する側に対しては、自由な自然言語を入力とするLLMアプリケーションには従来型のアプリケーションセキュリティが通用しにくいという課題を踏まえ、AI Application Security(AI Scanner/AI Guard)が紹介されました。AI ScannerはAIアプリケーションに対する疑似攻撃テスト(レッドチーミング)によってAIアプリケーションの脆弱性を事前に洗い出し、AI Guardは実運用時のプロンプト監視・制御を実現します。AI利用そのものを止めるのではなく、安全に活用し続けるための仕組みとして、多くの参加者の関心を集めました。
ディープインスティンクト株式会社の深澤正広氏は、「RECOVER × PREVENT」をテーマにランサムウェア対策について解説しました。
AI活用で重要なのは、ロジックよりもデータ量であり、近年保存データの急速な増加が顕著であります。そのような爆発的なデータ増加の時代に、旧来型の検索技術では運用が回らないことから、よりハイパフォーマンスで高い検知性能を持つ検索技術が必要です。
さらに、FSx for ONTAPのSnapshotやSnapMirrorは優れた復旧手段を提供します。しかし、復旧対象データにマルウェアが混入していた場合、そのまま復元することで再感染のリスクが生じる可能性があります。
そこで同社が提唱するのが「Recover × Prevent」という考え方です。Snapshotによる迅速な復旧能力に加え、ディープラーニングを活用したハイパフォーマンスな予防型セキュリティを組み合わせることで、既知・未知のマルウェアを保存前に検出し、データそのものの健全性を維持します。
AI時代では、データ量に加えてデータ品質や信頼性が重要になります。学習データやRAG用データが汚染されれば、AIの出力品質にも直結します。講演では、AI活用の前提として信頼できる大容量データ保護が行える最新の検索技術が不可欠であることが示されました。
NetAppからは藤原善基が登壇し、「実践例から学ぶAI・分析時代のデータ基盤設計」をテーマに、データ活用基盤の具体的なアーキテクチャを紹介しました。
企業内には価値あるデータが大量に保存されていますが、その多くはファイルシステム内に眠ったまま活用されていません。AI活用が進む中で重要なのは、データを移動することではなく、既存データを安全に活用できる環境を整えることです。
セッションでは、Amazon S3 Access Points for FSxを活用しながら、
また、企業が抱える「属人化」「サイロ化」「再利用できない自動化」といった課題に対し、AWSマネージドサービスを組み合わせて運用ノウハウをコード化し、再利用可能な設計資産として蓄積していくアプローチも紹介しました。
データ保護の観点では、Snapshot、SnapMirror、SnapVault、SnapLock、Autonomous Ransomware Protection(ARP)/AI、Tamperproof SnapshotなどONTAPの豊富な機能を活用し、セキュリティとデータ活用を両立するアーキテクチャについて解説しました。
最後のセッションでは、株式会社ネットワールドの福住遊氏より、「NetApp × AWSの新しい使い方と買い方」が紹介されました。
セッションではAmazon EKS、NetApp Trident、FSx for ONTAPを組み合わせたKubernetes環境でのストレージ活用方法を紹介。コンテナ環境においてもエンタープライズレベルのデータ管理機能を活用できる点が解説されました。
さらにAWS Marketplaceを活用した新たな調達モデルについても触れられ、従来の商流と比較した調達スピードの向上や柔軟な販売モデルについて紹介がありました。
Amazon QuickとFSx for ONTAPで実践するデータ活用とサイバーレジリエンス
本セミナーでは講演トラックと並行して、技術者向けハンズオンセッションも実施しました。今回のハンズオンでは、「Amazon QuickによるFSx for ONTAPのデータ利活用」と「Tamperproof Snapshotを活用したランサムウェア対策・復旧」をテーマに、参加者自身が環境を操作しながら実践的に学べる構成としました。
ハンズオン環境はFSx for ONTAPを中心に構成され、Windowsクライアント、S3 Access Points、Amazon Quickを組み合わせた実践的なアーキテクチャを用意しました。
参加者はAWS Systems Manager Fleet Manager経由で専用環境へ接続し、実際の運用シナリオに沿って操作を行いました。

前半では、FSx for ONTAPのS3 Access Points機能を利用し、ファイルサーバとして運用されているデータをAIや分析サービスから活用する方法を体験しました。
従来、ファイルデータを生成AIや分析基盤で利用する場合は、Amazon S3へのデータコピーやETL処理が必要になるケースが一般的でした。しかしS3 Access Points for FSxを利用することで、FSx for ONTAP上のデータをS3バケットのようにAWSサービスへ公開できます。
ハンズオンでは、
特に印象的だったのは、FSx for ONTAP上に保存されたPDFや技術文書を移動・複製することなく、Amazon QuickのKnowledge Baseとして利用できる点です。
アーキテクチャとしては、
FSx for ONTAP → S3 Access Points → QuickのKnowledge Base → Chat
というシンプルな構成で、既存ファイルサーバのデータをそのまま生成AI基盤へ接続できることを体験いただきました。
これは、多くの企業が抱える「ファイルサーバに眠る非構造化データをAI活用したい」という課題を解決する現実的な手法であり、会場でも高い関心を集めました。
後半では、サイバーレジリエンスをテーマとしたランサムウェア対策ハンズオンを実施しました。
まず、国内外でランサムウェア被害が継続的に増加している状況と、単にバックアップを取得しているだけでは十分ではない理由を解説しました。実際には、攻撃者がバックアップやスナップショットそのものを削除・暗号化してしまうケースも多く報告されています。
そのうえで、FSx for ONTAPに標準で搭載されているSnapshotの特性を確認しました。
参加者は実際にSnapshotを閲覧し、
を確認し、Snapshotの仕組みを体感しました。
さらに、ハンズオン講師がランサムウェアを模した暗号化スクリプトを実行し、共有フォルダ上のファイルが暗号化される様子を確認しました。暗号化後はファイル拡張子が変更され、通常業務では利用できなくなる状況を再現しました。
続いて実施したのが、Tamperproof Snapshotの有効性を確認する演習です。
通常のSnapshotはストレージ管理者権限を取得されると削除される可能性があります。しかしTamperproof Snapshotでは、あらかじめ設定した保持期間中は管理者であっても削除できません。これにより、攻撃者がストレージ管理者アカウントを乗っ取った場合でも、リカバリポイントを保護できます。
参加者には実際にCLIからSnapshot削除コマンドを実行しましたが、Tamperproof Snapshotについては削除が拒否されることを確認しました。講義形式ではなく実際に失敗を体験することで、その保護効果をより具体的に理解いただけたのではないかと思います。
最後に、FlexCloneによる効率的なデータ復旧の実践を行いました。
ランサムウェア対応において、迅速な「業務復旧」と原因調査のための「証拠保全」の両立は重要な課題です。FlexCloneは、Snapshotから容量を消費せず瞬時に読み書き可能な領域を作成できるため、証拠を保全しつつ業務を復旧できます。今回の演習では、Tamperproof Snapshotに対してFlexCloneを適用し、迅速なデータ回復プロセスを実践しました。
この演習を通じて、
がどのように連携し、ランサムウェア被害からデータを守るのかを実践的に学んでいただきました。
今回のハンズオンで参加者の皆さまに体験いただいたのは、単なるストレージ機能ではありません。
FSx for ONTAPのS3 Access Pointsを活用することで、既存のファイルデータを容易にAI活用へつなげられること。そして同時に、SnapshotやTamperproof Snapshotによってそのデータを保護し続けられることを、実際の操作を通じて確認いただきました。
AI活用が進むほど、重要になるのは「どれだけ多くのデータを持っているか」ではなく、「信頼できるデータを継続的に活用できるか」です。
データ活用基盤とサイバーレジリエンスを両立するFSx for ONTAPは、まさにAI時代のデータプラットフォームとして重要な役割を担う存在であることを、ハンズオンを通じて体感いただきました。
今回のフォローアップセミナーを通じて改めて浮き彫りになったのは、「AI活用の成否を決めるのはAIモデルではなく、その基盤となるデータである」という点です。
企業が保有する膨大なファイルデータを安全に保護しながら活用すること。
ランサムウェアなどの脅威から守ること。そして、分析や生成AIサービスへシームレスにつなげること。
そのためには、ストレージ、セキュリティ、運用自動化、AI基盤を個別最適で考えるのではなく、データ中心のアーキテクチャとして設計することが重要になります。
NetAppは今後もAWSおよびパートナー企業の皆様と連携し、お客様のAI活用とデータ活用を支える最適なソリューションを提供してまいります。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
AWSパートナーにてクラウド事業の責任者を経て、ネットアップではSales SpecialistとしてAWSへのマイグレーションを中心に、導入支援やマーケティング活動等に従事。 JAWSクラウド女子会運営メンバー。