住民情報をITで管理するようになり、自治体のシステムは膨大なデータ処理が発生するようになりました。したがって、柔軟性のあるクラウド利用が進んでいます。
社会的な意義のある自治体のシステムにはレスポンスの速さが求められる一方で、障害に耐えうる持続的な運用が必須条件です。災害を想定したバックアップや、堅牢なセキュリティで守られていなければなりません。
NetAppでは自治体のニーズに合わせたソリューションを展開しています。ここでは3つのソリューションを紹介するとともに、広島県庁様の導入事例を中心に、京都市役所様、兵庫県様の導入事例を紹介します。
NetAppのストレージやデータ管理のソリューションは、自治体の幅広いニーズに対応しています。事務系のインフラストラクチャー、仮想デスクトップ、セキュリティの3つの領域に焦点をあてて、課題、対応する製品、導入効果を解説します。
マイナンバー関連の事務系ソリューション
引越しの際に住⺠情報を更新する場合、住民のみなさんに何度も窓⼝に⾜を運んでもらう不便があります。自治体で働く職員としては、⽇時、週次、⽉次、年次のバッチ処理が遅いため、処理が終わるまで帰宅できないことが悩みどころです。
さらに、オンラインによるバッチ処理ができないため即時に帳票が出せない、容量や性能が不⾜したときスケールアウトやオンラインで拡張ができない、データベースのライセンス費⽤が高いなど技術関連の課題もあります。
これらの課題解決には、サーバー、ストレージ、ネットワークの一体化した仮想化環境を構築できるNetApp HCIが適しています。NetApp SolidFire、NetApp FASを加えて環境を整えます。
専⽤のオールフラッシュアーキテクチャで、性能劣化のないNetAppの安定したサービスを導入することにより、データベースを高性能化してCPUの待ち時間を削減し、ライセンスの最適化にも貢献します。即時適応のバッチで迅速な住⺠サービスを提供し、満⾜度を向上させることが可能です。
インライン重複排除でデータセットや占有領域を縮小させて物理的なラックスペースを削減、オールフラッシュアレイとスケールアウトアーキテクチャによって快適なオンライン拡張を実現します。
総合行政ネットワークの仮想デスクトップ利用ソリューション
仮想デスクトップの導入を検討したのはよいのですが、コンポーネントが複雑ですぐに導⼊できない場合があります。投資予算を抑えて小規模でスタートしても、拡張時に自由度が制限される課題が生じます。障害が起きたとき複数のベンダーにサポートを依頼しなければならずに、解決が長期化することもあります。
NetApp HCIで仮想デスクトップ(VDI)を構築し、SnapMirrorを使ってNetApp FASでバックアップを行う方法が解決方法のひとつです。
検証済みのパフォーマンス指標をもとにシンプルなサイジングを行うため、迅速な導⼊を実現します。さらに効率化の面で業務改革はもちろん、HCIによる運⽤コスト削減、仮想化環境によるラックスペース縮⼩とコスト削減が可能になります。
セキュリティを強化したクラウド構築ソリューション
自治体でクラウド利用を検討するときに、仮想化基盤の製品選定と調達、設計、構築に時間がかかり、導入が長期化する場合があります。一方で、ハードウェアやネットワークの拡張や変更が煩雑です。複数のメーカーやベンダーにサポートが分散し、障害解決に時間が長引きます。
仮想化基盤で一体化した環境を提供するNetApp HCIと、NetApp FASもしくはバックアップソフトウェアのVeeAMとNetApp FASを組み合わせた構成で、この課題が解決できます。
HCIによってサーバー、ストレージ、ネットワークが一体化され、最短2週間で導入が可能になります。シンプルな構成のため、運用管理の煩雑さが軽減します。バックアップとリストアの簡素化も可能です。スケールアウトにより迅速かつ簡単に拡張できるメリットもあります。
このようなニーズに合わせたソリューションのほか、システム全体のパフォーマンスを挙げる目的においてもNetAppのソリューションは適しています。
NetAppのクラウドストレージを利用してシステム全体のパフォーマンスを向上させた、広島県庁様の導入事例を紹介します。
システムの概要と更改の要件
広島県⾏政LAN / WANシステムは、県の業務を遂⾏するための情報基盤として整備され、本庁と地⽅機関各庁舎およびデータセンターを結ぶシステムです。
システム更改の要件には、まず全体最適化とITによるワークスタイル変⾰の実現がありました。具体的には、パブリッククラウドストレージの活⽤とファイルサーバーの容量増強が要件です。同時に製品の性能、信頼性、セキュリティの担保を確保し、災害時のサービス継続を実現することでした。
情報の電⼦化によって取り扱うデータが大容量化すると、適正な容量を確保することがローカルへの保存や外部記憶媒体、紙媒体への書き出しを抑制します。さらに情報漏洩や紛失、誤消去のリスク低減にもつながるという想定がありました。
システム更改に使われたNetAppの技術
特長的なNetAppの技術としては、まずFlexVolによるアグリゲートのボリューム構成があります。RAIDグループをアグリゲートとして扱うとき、FlexVolは自由にボリュームを切り出して利用可能です。オンラインによるサイズの拡大縮小も可能で、サーバーもしくはクライアントには、NFS、CIFS、iSCSI、FCPのすべてのプロトコルが利用できます。
ストレージ効率化機能には、重複排除と圧縮があります。いずれも無償で提供されている機能です。圧縮機能は、重複排除と同時に適用することによってさらに大きな効果をもたらします。
重複排除では、ボリューム内に複数存在する同じブロックデータを削除します。プライマリ、バックアップ、アーカイブのあらゆる⽤途で利用できる機能で、4KBブロック単位の重複排除によって、スペース効率を⼤幅に改善します。
圧縮機能としては、書き込まれるデータまたはストレージ内部に存在する異なるデータブロックをまとめて圧縮し、8KBを超えるデータを8KB(Adaptive Compression)、32KB(Secondary Compression)単位のCompression Groupsごとに圧縮します。
オールフラッシュのストレージでは、さらにインラインでの重複排除、圧縮、コンパクションが可能になります。
NetAppはどのような点で評価されたか
Snapshotによるスムーズなファイルリカバリーの実現が評価されました。運用面における効率化では、オールフラッシュによるインラインの重複排除および圧縮がポイントです。重複排除および圧縮を維持したまま遠隔地のバックアップを実現したことも、高評価につながりました。
総合的には、クラウドストレージを利⽤して可⽤性を向上させることができました。
広島県庁様のほかにも、NetAppには自治体の導入実績があります。京都市役所様と兵庫県様の2つの事例を紹介します。
京都市役所様
サーバー仮想化とバックアップ環境にNetAppを採⽤しました。SnapMirrorを通じて九州への遠隔地バックアップを行ない、⼤規模災害にも耐えるBCP体制を実現しています。
導⼊背景には、部⾨ごとにシステムの調達と運⽤を行っていたことがあります。したがって、各部門の運⽤レベルに大きな差が生じていたことが課題です。一方、庁内システムの仮想化集約に適した⾼性能かつ堅牢なストレージシステムが必要でした。センター内のデータバックアップだけでは、地域全体が被災するようなケースに対応できなかったからです。
クラウドを利用することにより、システム管理の委託とクラウドならではの俊敏性と柔軟性を両⽴できました。NetAppのストレージ効率化機能によって、将来的な仮想化集約にも対応可能になりました。SnapMirrorによって、京都と九州の遠隔地を結んで⼤規模災害にも対応できる強固なデータ保護体制を確⽴したことが大きな成果です。
兵庫県様
検証済みソリューションのFlexPodにより、ネットワーク系の課題を解消した事例です。
導入の背景として、汎⽤機からオープン系のシステム基盤に移⾏して5年が経過し、ネットワーク構成の複雑化や膨⼤な物理配線などの課題が生じていました。ストレージの負荷に対応することも課題でした。
FlexPodを採用した理由は要件を満たすだけでなく、構築や運⽤負担の軽減も含めた費⽤対効果が評価されたからです。検証済みのため、短期間で新たな基盤を構築できました。レスポンスに優れ、ストレージリソースの負荷の軽減にも貢献しています。
ネットワークの物理配線の数は、従来と比較して8〜10分の1に圧倒的に減少できました。その後、Web分離によるVDI基盤構築においてもFlexPodとAFF 8060を採⽤して効果を上げています。
自治体においてもクラウド化や、オールフラッシュによるストレージ採用をするケースが増えました。NetAppのソリューションは、自治体の要求に応えるパフォーマンスを発揮しています。