IT関連用語である「プロビジョニング(Provisioning)」。企業のIT関係者であれば良く聞くキーワードではないでしょうか。しかし、その用途は多岐にわたるため色々な場面でプロビジョニングという言葉が多用されているため、正直プロビジョニングについて誤解が増えていることも事実です。
今回は、このプロビジョニングについてあらためて押さえておきたい意味やポイントに関してご紹介いたします
プロビジョニングという言葉は日本語で「供給・支給・引き当て」といった意味があります。もともとは軍事活動において、必要な食料等を準備し提供することをプロビジョニングと呼んでいました。現代ビジネスにおいては「顧客に対する技術やサービスの供給」という意味で使用されることが多くなっています。
一般的にITの世界においてのプロビジョニングとは、設備やサービスに対して新たな利用申請や需要が発生した場合に、必要となる資源一式の割り当てを行いうことを言います。
一口にプロビジョニングといっても実はいくつかの種類があります。主な種類は「サーバプロビジョニング」「サービスプロビジョニング」「ユーザープロビジョニング」の3つです。
1. サーバプロビジョニング
利用中のサーバにシステム障害が発生した際に、予備のサーバを本番用として設定するというように、サーバの割り当てを変更することを指します。障害発生時用に予備のサーバを準備しておくことで、業務をストップしないまま障害の原因を追究し、改善し、問題を解消することができます。また、システム障害が発生したサーバを再び利用可能にするための作業もサーバプロビジョニングの内です。
2. サービスプロビジョニング
サービスプロビジョニングとは主に、ISP(Internet Service Provider(インターネット・サービス・プロバイダー)がユーザー向けにサービスを設定・提供することを指します。たとえばDNSサーバの設定やメール設定、FTPの設定、HTTPSの設定などが挙げられます。
3. ユーザープロビジョニング
システムやアプリケーションを利用するに際し、ユーザーのアカウント作成や権限の付与、ソフトウェア設定などの割り当てをユーザープロビジョニングもしくはアカウントプロビジョニングやIDプロビジョニングと呼びます。
このように、プロビジョニングにも種類があり、それぞれがビジネスにおいて重要な役割を果たしています。
数ある「○○プロビジョニング」の中でも、ストレージの世界でもっとも有名なプロビジョニングといえば「シンプロビジョニング(Thin Provisioning)」でしょう。「シン(Thin)」とは「薄く、そぎ落とされた様」を意味します。では、シンプロビジョニングでは何が薄くそぎ落とされるのでしょうか?
複数稼働しているストレージを仮想的に統合して、1つの大きなストレージプールとして利用することを「ストレージ仮想化」と呼びます。一方、シンプロビジョニングは、さらに各サーバが現在利用している容量だけを割り当てることを指します。
サーバというものは、ストレージに要求する容量のうち実際は20~30%程度しか使用されていないのが通常です。要するに10TBの容量をストレージに要求しても、実際は2~3TBほどしか使用していないということです。
問題は、サーバが要求した容量に応じないとストレージとして認識されないことです。そのため、ストレージはサーバに対して使用しない7~8TBの容量を余分に割り当てなくてはならず、割り当てた容量に関しては他のサーバで使用することは当然できません。
この問題を解決するためにプロビジョニングが使われます。たとえばサーバが10TBの容量をストレージに要求したら、2~3TBの物理容量に加えて7~8TBの仮想的に拡大した容量を割り当てます。サーバからすれば7~8TBの余分な容量があるように見えても、実際には存在しない容量です。しかしサーバは要求通りの容量が割り当てられたと認識してくれるので、ストレージとして活用しつつ7~8TBの物理容量を他のサーバに割り当てることができる、という仕組みです。
このように、サーバとストレージの関係性から必然的に生じる「容量のムダ」を排除にし、より広範囲にストレージを分配するための仕組みを作るのがシンプロビジョニングです。
このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。