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VMware環境のクラウド移行を円滑に導くストレージ

Amazon FSx for NetApp ONTAPを活用したAWS移行事例付き
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Kanako Kodera
小寺 加奈子

2025年1月30日に、「VMwareワークロードのクラウド移行、最適な選択肢を見極める方法とは? ~移行先の選定ポイントとストレージ選択の重要性を解説~」というセミナーを開催しました。今回はその講演内容のポイントについてご紹介します。

VMwareライセンス変更にどう対応する?ストレージとクラウド移行の選択肢

最初に、VMwareのライセンス体系変更による影響を振り返り、企業が取るべき対応策について整理します。

2023年12月11日に発表されたVMwareの新しいライセンス体系では、サブスクリプション契約の導入や、個別の製品選択の禁止が含まれています。この変更により、企業はパッケージで製品を組み合わせて使用することが求められるようになり、パートナープログラムの変更も影響を及ぼしています。また、AWSにおいては、VMware Cloud on AWSの販売方式がVMwareを通じたもののみに限定され、他のパートナー経由の販売ができなくなりました。このため、企業は柔軟な対応を迫られています。

AWSの年次イベント「AWS re:Invent 2024」のセッションでは、74%のVMwareユーザーが代替案を模索していると報告されています。さらに、2025年までに95%の新規デジタルワークロードがクラウドネイティブなプラットフォームでデプロイされるという調査結果もあり、企業はこのトレンドを意識する必要があります。弊社、ネットアップ合同会社では、仮想化基盤の見直しを通じて、企業がどのように進むべきかを提案しています。

NetApp chart

提案の一つは、VMwareを引き続き利用することです。この場合、コストの最適化を図りながら、ストレージのレイヤーから支援が可能です。また、クラウドネイティブ化を進める選択肢もあり、その場合はハイブリッドクラウドやマルチクラウド連携の支援が重要になります。

AWSが提唱する7R戦略に基づくVMwareワークロード移行戦略では、リタイア、リテイン、リロケート、リホスト、リプラットフォーム、リパーチェス、リファクタリングの七つのパスが提示されています。これらの選択肢を活用することで、企業はコスト最適化を実現しつつ、必要に応じてアプリケーションやインフラのリファクタリングを進めることができます。

仮想環境のデータ管理を支えるNetAppストレージのユースケース

次に、仮想環境におけるNetAppストレージのユースケースについて詳しく解説します。仮想環境のストレージ選定は、パフォーマンスやコストの最適化だけでなく、データの可搬性やセキュリティ対策の観点からも重要な要素です。NetAppは、さまざまなハイパーバイザーやクラウド環境に適応できるストレージソリューションを提供しており、多くの企業が採用しています。

hypervisor alternatives

仮想環境では、VMwareをはじめ、Microsoft Hyper-V、KVM、OpenShift Virtualizationなど、さまざまなハイパーバイザーが選択肢として挙げられます。特に、近年ではProxmoxをオンプレミス環境で検討する企業も増えています。これらの異なるハイパーバイザーを活用する場合、データの連携や移行が重要な課題となります。そのため、特定のハイパーバイザーに依存すると、データ移行の負担や学習コストが増加し、導入や運用の柔軟性が損なわれる可能性があります。

NetAppは、こうした課題に対応するために、ハイパーバイザーに依存しないデータ管理を実現しています。その結果、NetAppのストレージOSは、さまざまなユースケースに適応し、VMware環境はもちろんのこと、エンタープライズアプリケーションにも対応しています。さらに、NFSやiSCSI、SMBなどのマルチプロトコルをサポートすることで、多様なワークロードに適用できる点が強みです。

また、NetAppのコアコンセプトである「Data Fabric」は、データの可搬性を高めるための重要な概念です。これにより、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドのいずれの環境でもデータを自由に扱えるようになり、特定のプラットフォームに縛られることなくデータ連携を実現できます。そのため、ビジネスの柔軟性が向上し、継続的な価値創出が可能となります。

NetAppのUnified Data Storageは、Data Fabricを具現化するソリューションの一つです。このストレージを活用することで、データのサイロ化を防ぎ、可搬性を確保できます。また、ライセンスの変更やプラットフォームの移行が必要になった際にも、容易にデータ移行や設計変更を行える点がメリットです。

NetAppは、20年以上にわたりVMwareと協力し、仮想環境におけるベストプラクティスを確立してきました。これまでに2万社以上の企業がNetAppとVMwareの組み合わせを採用しており、信頼性の高いストレージソリューションとして実績を積み重ねています。

Amazon FSx for NetApp ONTAPの強みと他ストレージとの違い

Amazon FsX

つづいて、Amazon FSx for NetApp ONTAP(以下、FSx for ONTAP)の特長について詳しく見ていきます。本サービスは、マルチプロトコル対応のユニファイドストレージとしての強みを持ち、AWS環境での柔軟なデータ管理を実現します。

FSx for ONTAPは、AWS上で利用可能なフルマネージドのファイルストレージサービスであり、NetApp ONTAPの高度なストレージ機能を提供します。このサービスはAWSのネイティブサービスとして提供されており、NetAppとAWSが共同開発を行うことで、密接に統合されたソリューションとなっています。これにより、クラウド環境におけるデータ管理がより効率的かつ柔軟に行えるようになっています。

AWSにはAmazon S3、Amazon EBS、Amazon EFSといったさまざまなストレージサービスがありますが、FSx for ONTAPは、これらとは異なり、マルチプロトコル対応のユニファイドストレージを実現している点が大きな特長です。具体的には、NFSやSMBといった異なるファイルアクセスプロトコルに対応しており、Linux環境とWindows環境の両方で同一のストレージを利用できます。また、iSCSIにも対応しているため、ブロックストレージとしての利用も可能です。これにより、複数のプロトコルを個別に管理する必要がなくなり、ストレージ環境の統合が進むことでサイロ化を防ぐことができます。

従来、AWS上でファイルサーバーを構築する際は、NFSを利用するEFSや、Windows環境向けのAmazon FSx for Windows File Serverを使い分ける必要がありました。しかし、FSx for NetApp ONTAPを利用することで、単一のストレージサービス内で異なるOS間のデータ共有が可能となり、管理の一元化とコストの削減が期待できます。このような統合によって、企業のIT部門はストレージの運用負担を軽減できると考えられます。

セキュリティ面においても、NetApp ONTAPはゼロトラストの考え方を取り入れた機能を備えています。例えば、複数の管理者による認証を必要とするマルチAdminベリファイ機能や、ランサムウェア対策のためのオートノマスランサムウェアプロテクションといった機能が提供されています。これらの機能はオンプレミス環境でも利用可能であり、AWS環境においても一部が実装されています。現時点ではAWS上で提供されていない機能もありますが、今後の開発に期待が寄せられています。

このように、FSx for ONTAPは、AWS環境でのデータ管理を強化するための強力なストレージソリューションです。マルチプロトコル対応による統合ストレージとしての役割を果たし、サイロ化の防止や管理の効率化に貢献します。さらに、高度なデータ同期機能やセキュリティ機能を備えており、企業のITインフラをより柔軟かつ安全に運用するための選択肢となるでしょう。

FSx for ONTAPを活用したクラウド移行事例とAWSでの最適化戦略

最後に、FSx for ONTAPを活用したAWS移行事例を紹介しながら、クラウド上での最適化戦略について考察します。

FSx for ONTAPを利用したクラウド移行は、特にVMwareワークロードにおいて大きな効果を発揮しています。このサービスは、AWS上で仮想化環境を構築し、オンプレミスのVMware環境をスムーズに移行することを可能にします。最近、Amazon Elastic VMware Service(Amazon EVS)がプライベートプレビューとして発表され、今後の活用が期待されています。このサービスの特徴は、VMwareの使い慣れた環境をそのままAWS上で再現できる点にあります。

FSx for ONTAPの大きなメリットは、ライセンスの調整が可能であることです。これにより、ストレージ容量が不足することなく、コンピュータのCPUやメモリを効率的に活用できます。さらに、データ領域を自由にスケールアップまたはスケールダウンできるため、コスト削減を図ることができます。加えて、ONTAPは高いパフォーマンスを提供し、大容量ファイルの処理にも優れています。そのため、FSx for ONTAPをNFSデータストアとして利用することは、柔軟性とパフォーマンス管理の両面において有益です。

移行事例の一つとして、米国のエネルギー流通会社であるPhillips 66のケースがあります。この企業は、オンプレミス環境でNetApp ONTAPを活用しており、AWSへの移行によってストレージコストを80%削減しました。従来の仮想マシン(VM)をそのまま移行するのではなく、リホストおよびリファクタリングの手法を組み合わせることで、より効率的なシステム再構築を実現しています。この事例からも、クラウド上でのコスト削減とライセンス管理の最適化が可能であることがわかります。

また、Amazon EC2へのマイグレーションに向けたデータ移行戦略も重要なポイントです。NetAppとAWSが提供するドキュメントに基づき、データ移行ツールを活用することで、ブロックストレージの移行がスムーズに進むことが期待されます。この際、OS領域とアプリケーション領域を明確に分離することが求められます。具体的には、アプリケーション領域はFSx for ONTAPへ直接移行できる一方で、OS領域はEBSと組み合わせて対応することが推奨されます。

さらに、AWS上ではマルチクラウド環境の構築も可能であり、Azure環境からの移行も視野に入れることができます。このような柔軟な移行パスは、新たなプラットフォームを模索する企業にとって大きな価値をもたらします。データベースの活用事例としては、米国の医療系ソフトウェア企業であるInforが4000万件を超える医療メッセージを処理し、クラウド環境での高い可用性を実現しています。また、スペインの旅行会社Avorisも、開発スピードの向上を目的にFSx for ONTAPを活用しています。

総じて、FSx for ONTAPを活用したクラウド移行事例と最適化戦略は、企業が直面するコスト削減やライセンス管理の課題に対する有効な解決策を提供します。クラウド環境における効率的な運用の重要性は今後ますます高まると考えられます。

小寺 加奈子

AWSパートナーにてクラウド事業の責任者を経て、ネットアップではSales SpecialistとしてAWSへのマイグレーションを中心に、導入支援やマーケティング活動等に従事。

JAWSクラウド女子会運営メンバー。

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