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仮想化のメリットとデメリット

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庄司 知代 (Tomoyo Shoji)
庄司 知代

現在のITインフラの主流となっている仮想化とは、サーバやストレージなどのリソースを物理環境に依存せず、論理的に統合し、物理構成とは異なる単位で管理したり利用したりするための技術です。今やこの技術はITシステムにとって欠かせないものであり、仮想化市場は年々成長傾向にあります。

このような仮想化ですが、場合によってはメリットばかりではありません。そこで可能化のメリットとデメリットを物理環境と比較しながらご紹介していきます。

仮想化のメリット

仮想化にはサーバ仮想化やストレージ仮想化など様々な技術があり、一般的なメリットは次のようなものがあります。

≪仮想化の一般的なメリット≫

  • リソースの無駄を排除できる
  • 安価なサーバで対応できる
  • 障害に強くなる
  • 古いシステムを延命できる
  • コスト削減になる

それぞれのメリットについて説明していきます。

リソースの無駄を排除できる

アプリケーションを稼働するためのサーバは長い歴史の中で高性能化され、現在では安価なサーバでも多くのリソースを確保することができます。しかし、サーバは各アプリケーションに対して構成されることが一般的であり、一つの物理サーバは特定のアプリケーションのために用意されていることも多くあります。このためサーバリソースを十分に活用できていない場合が多く、一部の調査では90%以上のサーバがリソースを10%も使用していないというデータもあります。

皆さんも、サーバの全体のリソース使用の効率が悪く、どうにかして余っているリソースを活用したいと考えられたことがあるのではないでしょうか。

仮想化はまさにそうしたリソースの無駄を排除するための技術です。たとえばサーバ仮想化は、本来一つである物理的なサーバリソースを論理的に複数に分割し、分割したそれぞれのリソース上で複数のサーバが稼働しているように構成することができます。物理的には一つのサーバでも、その中には複数のサーバが存在するイメージです。この場合、各仮想的に動作しているサーバを仮想マシンと呼びます。

このように物理的には共有していても論理的には別の環境として動作することができるため、余剰していたサーバリソースをフル活用でき、無駄が排除されます。

複数のストレージを一つに統合するストレージ仮想化も、ストレージを必要な用途ごとに論理的に分割して使用できるので、同様に無駄を排除できます。

安価なサーバで対応できる

高性能なアプリケーションを稼働するためには、それに相応なサーバを用意しなければなりません。高性能サーバとなるとかなりの導入コストになることもあります。

これに対して仮想化を導入している環境では、物理的にはリソースに制限があっても、論理的に集約して利用することで十分なリソースを提供できるメリットがあります。安価なサーバも複数を一つに統合してリソースを集約すれば、必要なリソースを準備することができます。

障害に強くなる

社内システムのデータを数台のストレージで管理している場合、一つのハードウェアに障害が起こるとシステムにもたらす影響は大きなものです。場合によってはシステム稼働が停止する可能性もあります。

こうしたリスクを回避するためにも仮想化は使われています。

例えば物理的には数十台から成る、論理的に統合されているストレージ環境を運用していれば、一つのハードウェアに障害が発生しても、その分を他のハードウェアがカバーできます。このように障害に強くなれば、継続的に安定したシステム稼働ができます。

古いシステムを延命できる

業務システムに古いアプリケーションを使用していて、ベンダーのサポートや新しいOSでのサポートも切れている、というケースも少なくありません。これを今後も継続して使用する場合、OSなどの動作環境は用意できたとしても、それをサポートするサーバなどのハードウェアが調達できないことがあります。

しかし、サーバを更新すると古いOSに対応しておらず、アプリケーションが対応していない新しいOSにせざるを得ないという場合があります。

このような場合、新しい物理サーバ上に仮想環境を用意し、古いバージョンのOSがインストールされた仮想マシンを作れば、古いシステムも継続して稼働することができます。

コスト削減になる

これらのメリットは、総じてコスト削減につながります。リソースの利用効率が向上して無駄がなくなったり、古いシステムを延命できることはITコストに直結するメリットなので、明確なコスト削減効果が期待できます。

以上がサーバ仮想化やストレージ仮想化などの仮想化の一般的なメリットです。この他にも仮想化の種類によって、IT環境を一元管理できるなど様々なメリットがあります。

仮想化のデメリット

仮想化のメリットは様々なITインフラの課題を解決します。しかし、環境によってはデメリットになることも考慮しなければなりません。仮想化の一般的なデメリットは次のようなものがあります。

≪仮想化の一般的なデメリット≫

  • 小規模環境ではコストが割高になる
  • 高速なI/Oを必要とするシステムでは物理サーバのほうがパフォーマンスがよい
  • 仮想化環境を管理するための知識と技術が必要になる
  • 物理ハードウェアの障害での影響範囲が大きくなる可能性がある
  • それぞれのデメリットについて紹介していきます。

小規模環境ではコストが割高になる

仮想化を導入すると安価なサーバでシステムに対応できるため、コスト削減に繋がると説明しました。しかし、小規模な環境では逆にコストが割高になる可能性があります。例えば2~3台の物理サーバを統合しようとした場合、仮想化ソフトウェアやストレージを用意するためのコストが上回ってしまい、結果としてコスト削減にならないことがあります。

このため、規模などによって仮想化によるコストメリットがあるかどうかを、慎重に検討することが大切です。

高速なI/Oを必要とするシステムでは物理サーバのほうがパフォーマンスがよい

仮想化は物理的なリソースをソフトウェアを使用して論理的な単位に変換して管理や利用を行う技術です。そのため、物理環境で使用する際にはなかった、たとえばサーバ仮想化ではハイパーバイザと呼ばれる仮想化ソフトウェアを通してOSやアプリケーションがハードウェアを利用する形になります。そのため、物理環境に比較すると仮想化ソフトウェアの分だけオーバーヘッドが発生し、その分パフォーマンスに影響することがあります。

また使用するドライバもハイパーバイザで用意されるものなのか、ハードウェアのネイティブなものかなどで機能やパフォーマンスに影響が出る場合があります。

このため、厳密なパフォーマンスが要求されるようなアプリケーションを稼働する場合は、物理サーバを利用する方が安定するという場合もあります。

仮想化環境を管理するための知識と技術が必要になる

こちら「ハイパーコンバージドインフラと仮想化の違いをご存知ですか?」記事もご参考にしてください!

仮想化というのは通常のサーバ管理知識や技術だけで運用できるものではありません。そのため、運用のために専門の知識と技術が必要になります。企業によって仮想化のための人材を確保したり教育を行う必要があるので、コストがかかる場合もあるでしょう。

物理ハードウェアの障害での影響の範囲が大きくなる可能性がある

サーバ仮想化では一つのハードウェア上で複数のアプリケーションが稼働しています。そのため、ハードウェアに障害が発生した場合、そこで稼働している全てのシステムに影響が出る可能性があるということにもなります。

リソースを集約し、効率よく利用しているため、障害発生時の影響範囲が大きくなる可能性があるのです。そのため、物理サーバや仮想基盤の障害に対する冗長化などの構成をあらかじめ検討しておく必要があります。

ただし、物理構成においても冗長化などの検討は必要であるため、個別のサーバ単位で冗長化を行うよりは、全体的に効率的な冗長構成を取ることも可能でしょう。

まとめ

仮想化にはたくさんのメリットがあり、いまでは広く普及している技術になりました。しかし、場合によっては効率的でなかったり、注意点が必要な場合もあります。そのため、すべてを仮想化ありきで検討する必要はなく、メリットや注意点などを明確にしてから採用することをお勧めします。

なお、ここで紹介したメリットやデメリットは仮想化全般に関する一般的なものです。仮想化には様々な領域があり、それぞれのメリットやデメリットは個別に検討するべきものもあります。たとえばストレージ仮想化にはサーバ仮想化とは異なるメリットもあります。ネットアップではそのメリットを最大限に活用していただくための製品を提供しています。ぜひそのポイントも合わせてご検討ください。

このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。

庄司 知代 (Tomoyo Shoji)

庄司 知代

2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。

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