ユーザ事例:Be The Match 白血病、リンパ腫、鎌状赤血球症のような命を脅かす病気を患っている数千名もの人々は、骨髄移植が必要にも関わらず、家族の中に適合者がいません。こうした人たちの70%以上が、適合者を見つけるために Be The Match® を活用しています。非営利のNational Marrow Donor Program®(NMDP;全米骨髄バンク)によって運営されているBe The Matchは、こうした患者とドナーの橋渡しをしています。当団体では、HLA型に基づいて最適な適合者を発見し、この25年で50,000件をこえる骨髄移植を実現してきました(HLAは、指紋照合のようなもので、血液型で照合するより高い精度で適合性を識別できます)。 患者の担当医は、当団体にコンタクト後、Be The Match Registry®でドナーを検索することができます。このレジストリには、世界中の1500万以上の登録者と40万件の臍帯血提供者が登録しています。Be The Matchは、その複雑なアルゴリズムによって、患者に最も適合性の高いドナーを迅速に特定するため、わずか数分でドナー候補者が見つかります。私たちは、この情報に基づいて候補者に連絡を取り、追加の医療検査をお願いし、患者に最適なドナーを探し出すことができます。最終的に最適なドナーが選定されると、私たちはドナーとともに採取センターでの骨髄採取の計画を立てます。採取された骨髄・抹消血幹細胞(PBSC)は、ボランティアの輸送業者によって患者が移植を受ける病院に運ばれます。 当然のことながら、電子的に保管および転送できるデータが増え、データ転送が高速化するほど、重要な判断をより迅速に下せるようになり、より多くの患者を救うことができます。そこで私たちは、2007年にBe The Matchのテクノロジの見直しに着手しました。私たちは、2015年までの目標として年間の仲介移植件数の倍増と、移植完了までの日数を96日から45日に短縮することを掲げました。 小規模ながら急成長する多くの組織と同様に、Be The Matchも一元管理できない複数の自社開発システムを抱え、多数のデータソース、孤立したデータプールという課題に直面していました。手作業でのプロセスが一層の複雑化と非効率化を招き、目標達成能力がさらに低下していました。この記事では、私たちがITインフラをどのように移行したのか、特に目標達成に必要な可用性、拡張性、効率性を確保するために一からはじめたストレージの移行について詳しく説明していきます。また、Be The Matchのプライベートおよびパブリッククラウド計画についても触れます。 私たちのIT移行はまだ進行中の段階ですが、すでに非常に満足のいく成果を達成しています。
こうした重要な成果を達成できた主な要因はITの変革です。この取り組みによって、可用性の向上と効率化が実現しました。NetApp®ストレージを使用することで、管理者を追加せずに導入ストレージ数を増やすことができました。また、シンプロビジョニングと重複排除を通じて必要なストレージが35%削減されたため、結果として大幅な資本コストと運用コストの削減が実現しました。 共有ITインフラ 2007年のITの移行開始当時、ITインフラは90台のサーバで構成されていました。各サーバにはストレージとテープが直接接続され、サーバは仮想化されていませんでした。ファームウェアのアップグレードといった日常的な保守作業を行う時間を見つけることも難しく、バックアップとディザスタリカバリ(災害復旧)は困難でした。非常に深刻なシステム停止も何度か発生していました。こうした状況の中、私たちは共有ITインフラの導入を検討せざるを得なくなりました。さらに、ディスクのパフォーマンス向上、管理コストの削減、バックアップとDRの簡易化を実現するためには、一元管理できるストレージが必要でした。 現在、私たちはネットアップのユニファイドストレージで標準化しています。2007年には2つのFAS3020クラスタを導入し、プライマリ・データセンターとセカンダリセンター間のSnapMirror®レプリケーションが行えるようになりました。この頃にデータの急増が始まり、2008年にはデータを退避させることなくヘッドユニットを交換し、両方のクラスタをFAS3040コントローラにアップグレードしました。また開発 / テスト環境の厳しい要求に対応するため、この年にクラスタの1つをFAS3270構成へとさらにアップグレードしました。データの増加に合わせて中央のストレージを簡単にアップグレードし、処理能力を追加でき、しかも複雑なデータ移行作業が一切必要ない、というのは私たちにとって非常に重要なメリットです。 2010年にはFAS6080クラスタを追加し、ハイエンドデータベースのサポート専用に使用しています。また、バックアップ環境のサポートのためにFAS2040も導入したため、現在の本番環境では合計で4つのネットアップ製アレイが稼働しています。 サーバ環境には、Linux®およびWindows®上で稼働するIBM xSeriesサーバを選択しました。現在は全体の約50%の仮想化が完了していますが、一部のレガシー・アプリケーションはまだSolaris上で稼働しています。仮想化の規模を広げるための取り組みは、今も進行中です。取り組みの一環として、当団体のVMware®環境で稼働できるように、アプリケーションをSolarisからLinuxへ移植しており、こうした機能を実施するためのパッケージ・アプリケーションも導入しています。私たちが実行しているアプリケーションの中で、戦略性の高いものは10%に過ぎません。ほかの90%は既製のソリューションでサービスを提供できます。私たちほどの規模の組織(従業員数780名)では、標準的なソフトウェアで代用できる重要性の低い機能を、長期間かけて開発する余裕はないのです。 ![]() 図1 1) Be The Matchのストレージ・アーキテクチャ Be The Matchの重要なアプリケーション(社内開発および既製)には次のものがあります。
高いビジネス目標の達成のためにITを活用 上記のセクションで説明した共有ITインフラは、パフォーマンス、可用性、セキュリティ、データ保護、ディザスタリカバリを改善し、私たちの高いビジネス目標の達成に必要なツールを提供してくれます。ネットアップのストレージは、私たちがさまざまな面で前進するための基盤として機能しています。 ユニファイドストレージBe The Matchは小規模な非営利組織であるため、Fibre Channel、NFSなどのプロトコルごとに専用のストレージシステムを設置する余裕はありませんでした。当初、本番環境では単一のネットアップ・ストレージ・クラスタのみを使用していたため、この単一のクラスタでFC、NFS、CIFS、iSCSIの4つすべてのストレージプロトコルを使用することになりました。まずは9つのWindowsファイルサーバを排除し、すべてのCIFSデータをネットアップ・ソリューションに移行しました。上記で説明したアプリケーションですが、TraxisはNFSを使用し、Microsoft SQL Server®をバックエンドに持つ.NETアプリケーションであるSTAR LINKはファイバチャネルを使用しています。当然Microsoft Exchangeもファイバチャネルを使用し、Oracle E-Business SuiteはNFSを使用しています。データ量が少ないいくつかのアプリケーションではiSCSIを使用しています。昨年購入したFAS6080は、より大規模なデータベース専用と決まっているためNFSとFCのみを使用しますが、ほかのすべてのシステムでは、競合や問題が発生することなく4つすべてのプロトコルを使用しています。 これらのストレージシステムはクラスタ化されているため、(これから紹介するDR機能がなくても)高度な可用性が確保されています。すでに説明したとおり、データの移行を伴わずにストレージコントローラをアップグレードできるため、システムの停止や必要以上の事前購入を避けて、パフォーマンス向上のニーズに対応することが可能になりました。 バックアップとリカバリBe The Match Registryは、同種類のマッチングサービスと比較すると、世界的で最も人種 / 民族的に多様性の高いレジストリと言えます。ネットアップ・ソリューションの導入以前は、このレジストリのデータを保持するSTAR LINKデータベースのバックアップ完了に24時間以上かかっていたため、1日分のバックアップが翌日にまで持ち越されていました。NetApp SnapManager® for Microsoft SQL Server(SMSQL)を導入したことで、データベースへのアクセスを維持したまま、バックアップの所要時間を4時間未満に短縮することができました。 SMSQLに加えてSnapManager for Exchange(SME)も導入したため、Exchangeのバックアップ時間も同様に短縮できました。さらにSMEにSingle Mailbox Recovery機能を追加し、VTLまたはテープを使用せずに紛失した個々のメッセージのリカバリを実行できるようにしました。18箇所にリモートオフィスを構える私たちにとってEメールは極めて重要です。毎週のようにSingle Mailbox Recovery機能を使用し、何らかの理由で削除されたメッセージをリカバリしています。今後は、SnapManager for Oracle がOracle環境にもたらすメリットをDBAに教えた上で、このツールも活用する予定です。 SnapManagerは私たちのバックアップ戦略の要ですが、このツールではサポートされないアプリケーションもあります。たとえば、Be The MatchではSybaseベースの旧式アプリケーションを一部使用しています。Sybase用のSnapManagerは提供されていませんが、NetApp SnapDrive®およびAPIを使用してSybaseのデータにも同等のバックアップ機能を提供することができました。NetApp SnapManagerツールとSnapDriveの詳細は、過去のTech OnTap®記事. で説明されています。(ネットアップは、アプリケーションの統合を一層促進するために、最近 Snap Creator™ Framework をリリースしています)。 スナップショット・スケジュールは場合によって異なり、特定のデータセットの要件に基づいて設定されます。そのため、1時間ごと、毎日、毎週など、アプリケーションによってスケジュールが異なります。 私たちのバックアップ戦略に欠かせないもう1つの機能がCommVaultです。レプリケートされないデータやNetApSnapshot™によって保護されないデータは、CommVaultを使用して仮想テープライブラリ(VTL)にバックアップを取っています。私たちは各拠点にVTLを置き、拠点間でレプリケーションを行っています。DRサイトでは、VTLとネットアップストレージをアーカイブ目的でテープにバックアップしています。またコンプライアンスのために必要に応じてオフサイトのストレージにもバックアップしています。 ディザスタリカバリ以前使用していた直接接続ストレージ構成では、オンラインのディザスタリカバリが非常に困難だったため、オフサイトのテープを利用してリカバリを行うしかありませんでした。中央のネットアップストレージにすべてのデータを統合したことで、システム全体が大幅に簡易化され、DR機能が飛躍的に高まりました。 現在は、NetApp SnapMirror®ソフトウェアを使用して、すべてのティア1データをDRサイトに非同期でレプリケートしています。Snapshotコピーのスケジュールと同様に、レプリケーション・スケジュールもデータセットの要件に基づいて設定されています。データによっては、頻繁に30分ごとにレプリケートされています。 SnapManagerツールでは、SQL ServerとExchangeデータのレプリケーションの設定と管理も行えます。各レプリケーション・サイクルでは、ソースシステムのデータの一貫性あるSnapshotコピーが自動的に作成されます。したがって、レプリケーション後のDRサイトのデータは、必要に応じて即座に利用できます。 最近導入を開始した VMware Site Recovery Manager (SRM) は、VMware環境のディザスタリカバリ・プロセスの自動化に使用する予定です。SRMでは、DRサイトの仮想マシンの接続、インベントリ確認、再設定、起動を行えます。こうしたタスクは複雑で、手動で実行するのは困難です。さらに、特定のVMを起動するために別のVMを起動しなければならない、というような依存関係がある場合はなおさらです。SRMは、検出と設定、フェイルオーバー、DRテストなど、DRプロセス全体の管理を簡易化します。 Storage Efficiency機能ネットアップストレージ導入のもう1つのメリットは、ストレージ環境全体の効率化です。スペース効率の高いSnapshotコピー、前述のレプリケーションに加え、私たちはネットアップのシンプロビジョニングと重複排除機能もフルに活用しています。 ネットアップシステムでプロビジョニングされたほぼすべてのストレージは、シンプロビジョニングされています。したがって、ストレージの空き容量を単一のプールに集約し、多くのボリュームで共有できるため、スペースを大幅に節約できます。また、私たちは重複排除を非常に早い段階で導入しています。当時はインストールをするたびにネットアップの承認を取り、システムを稼働させていました。また、所有しているデータのタイプを考慮し、私たちは主にVMwareデータストアとCIFS共有に重複排除を使用しています。 現在までの成果 Be The MatchのITインフラ変革は現在も進行中ですが、すでに飛躍的な改善を達成しています。事業面での大幅な改善は、冒頭で説明したとおりです。IT面のみを考えると、非常に大きな進化と成長を遂げただけでなく、次のことを実現しました。
クラウド計画 Be The Matchは、患者とドナーのニーズに対応できる最高のテクノロジを使用した完全な仮想化共有ITインフラの実現を目指して、これからもインフラの拡張を続けていきます。ソフトウェアについては、最も重要なニーズ(ドナーと患者のマッチング)に焦点を当てて開発を行っています。それ以外のニーズには既製ソフトウェアの中から最適なものを選んで活用しています。 私たちのインフラ変革の次のステップは、プライベートクラウドの構築です。プライベートクラウドがあれば、組織内の開発者は、管理者を介すことなく完全にプロビジョニングされた仮想サーバを要求し、利用できるようになります。この計画で重要な要素になるのはNetAppとVMwareのテクノロジでしょう。 私たちは、ネットアップベースのインフラをパブリッククラウドに進化させる方法も検討しています。これが実現すれば、より多くの重病患者に人生の第2のチャンスを提供するという世界的使命を果たすために、40カ国の提携団体のネットワークがBe The Matchの先進的な機能を活用できるようになります。 | ![]() ![]() ![]() |
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