NetApp Tech OnTap
Rapid Cloningによる9,000人分の仮想デスクトップの展開

デスクトップ仮想化は、企業における業務方式の変革を可能にしつつあります。最近私が担当したある事務アウトソーシング企業では、仮想化テクノロジを利用し、従来型のコールセンターをなくそうとしています。数千人のコールセンターエージェントが在宅で勤務できるテクノロジ戦略を、ITチームが開発中です。その結果、この会社では不動産の調達に莫大な費用を投じる必要がなくなり、それと同時に世界中のスタッフへの完全なアクセスを確保できるようになります。

エージェントが在宅勤務できるようにする場合、最新データへのアクセス、セキュリティの確保、業務環境のサポートという点で、解決すべき固有の問題があります。デスクトップ仮想化を採用し、有線接続のある任意の場所で最大9,000人のエージェントが勤務できるようにしたこの企業の取り組みは、新しいアプローチの代表的な事例です。このソリューションの次の要素は、コールセンターサポートに限らず、さまざまな状況で検討に値するものと確信しています。

  • VMware®仮想デスクトップインフラ:適切なサポートツールのある専用のセキュリティの整ったワークスペースを、それぞれのエージェントに提供します。
  • NetApp® FlexClone®テクノロジ:エージェントデスクトップの迅速かつスペース効率に優れたプロビジョニングを可能にします。
  • NetApp SnapMirror®ソフトウェア:この企業の3箇所のデータセンター間でアクティブなデスクトップ環境を複製し、いずれかのデータセンターが稼働を停止した場合にも、データが損失したり、長時間にわたってエージェントがオフラインになったりする事態を防止します。
  • IPテレフォニー:顧客からの通話接続をエージェントの自宅まで拡張します。

この記事では、世界中のあらゆる場所のユーザを接続してサポートすると同時に、サイト障害時の業務中断を最小化する非常にスケーラブルなインフラを構築するために、この企業が採用している方法について紹介します。まずテクノロジ評価プロセスを振り返った後、テクノロジの導入過程を詳しく検証し、現在までの成果と今後の計画について説明します。

最適なテクノロジの決定

私がこの会社のITチームと初めて会い、ストレージについて話し合ったのは、半年ほど前のことでした。そのときITチームはすでに、仮想デスクトップソフトウェアとネットワーキングに関して、いくつかの技術的な方針を決定していました。社内でサポートしている製品ごとに専用のデスクトップ環境を作成し、それぞれのデスクトップのタイプをクローニング可能にしたいという意向だったため、Citrix(デスクトップイメージの提供)とVMware(デスクトップイメージのホスティング)を組み合わせて使用するという結論に達していました。ITチームが必要とするすべての機能を得るためには、その時点ではそれが唯一の方法でした。

また、バックエンドストレージ用には、Fibre ChannelではなくiSCSIの採用を決定していました。この会社はIPテレフォニーを大規模に導入しており、グローバルIPネットワークを運用していました。結果的にITチームはIPの柔軟性を高く評価し、可能であれば引き続きIPを使用する意向でした。

NetAppのプレゼンテーションを見たとき、ITチームは次の3つのテクノロジに関心を示しました。

  • マルチプロトコルサポート:引き続きiSCSIを使用するという方針は揺るがないものの、あらゆるプロトコルをサポートするNetAppの実証済みの機能を利用すれば、必要になった時点で変更できる点にITチームは注目しました。また、仮想環境におけるNFSのメリットについても強い関心を示しました。
  • FlexClone:NetApp FlexCloneテクノロジを利用すれば、デスクトップ環境のクローニングが可能なので、既定の方針だったCitrix/VMwareの組み合わせが不要になるという事実に、ITチームはすぐに気がつきました。NetApp Data ONTAP®とVMwareの間に必要な連携機能は、NetApp Rapid Cloning Utility(RCU)バージョン1.0で提供されます。
  • 重複排除: NetApp FlexCloneを使用すれば、9,000人のエージェントの各デスクトップ環境のコピーをそのままのデータ容量で維持する必要はなくなります。その一方で、コールセンター業務では大量の非構造化データが蓄積されるという事実を、ITチームは経験上知っていました。そのストレージ所要量を削減するための手段として、NetAppの重複排除機能が急浮上しました。たとえば、9,000人のエージェント全員がそれぞれ1 GBのファイルセットを保存すると仮定すると、それだけで9 TBのストレージが必要です。

さらに打ち合わせを続けるうち、ITチームは以下のNetAppテクノロジの価値を認識するようになりました。

  • Performance Acceleration Module(PAM): この会社では、他社製ストレージで実施した初期テストから、数百の仮想デスクトップを一度に起動すると、ディスクサブシステムに大きな負荷がかかることを知っていました。多数のコールセンターエージェントのデスクトップをすばやくオンラインにするには、このような「ブートストーム」(一斉起動による負荷)のI/O需要を満たさなければなりません。NetApp Performance Acceleration Moduleは、最初の仮想デスクトップを起動した時点で、ただちにそのブートイメージを構成しているブロックをメモリにキャッシュし、後続の起動要求のほとんどをキャッシュで対応できるようにすることで、ブートストームの影響を軽減します。
  • SnapManager® for Virtual Infrastructure(SMVI):この環境では大部分の仮想デスクトップが非持続的であり、バックアップは不要(業務セッションを開始するたびに各エージェント用の新しいデスクトップを作成する)になっていますが、上級のサポートエージェントなど、継続的な業務のために同じデスクトップを続けて使用する一部のユーザ向けに必要とされる持続的なデスクトップについては、SMVIを使用して自動的に保護することができます。
  • SnapMirror:私がこの会社と初めて面談した時点では、ITチームは仮想デスクトップ環境の災害対策プランをまだ策定していませんでした。NetApp SnapMirrorソフトウェアは、アクティブな仮想デスクトップ環境を1つのデータセンターから別のデータセンターに定期的に複製します。

以上のようなNetApp独自の機能によって、この会社が直面していたさまざまな問題が解決されるため、ITチームは、最終的な設計にあたって当初決めていた方針を再考することにしました。

導入の詳細

この仮想デスクトップ環境の最終的なアーキテクチャは、主に次の5つの要素で構成されています。

  • 次のコンポーネントで構成され、最大2,400人のユーザをサポートする「ポッド」:
    • 32個の8コアブレード(それぞれ32 GBのメモリを装備)を搭載した2台のHP C-Class Blade Enclosure
    • クラスタ構成のNetApp FAS3160ストレージシステム(20 TBのFCディスクストレージと、2つのPerformance Acceleration Module(合計32 GBメモリ)を搭載)
    • Catalyst 3120ブレードスイッチ4台
    • Catalyst 4948スイッチ2台
  • VMware Virtual Desktop Manager(VDM)およびVMware ESX
  • NetApp RCUバージョン1.0(NetAppストレージシステムごとに使用し、クローニング機能を提供)
  • NetApp SnapManager for Virtual Infrastructure(自動的なバックアップと、アプリケーションごとに一貫性のあるスピーディなリカバリを提供)
  • NetApp SnapMirrorソフトウェア(リモート複製用)

3箇所のデータセンターに上記のポッドを2つずつ導入すると、2箇所の実働データセンターだけを使って9,000人のユーザをサポートすることが可能になります。各データセンターでSnapMirrorによってアクティブなデスクトップ環境をもう1箇所のサイトに複製し、完全な冗長性を提供することで、いずれかのデータセンターがオフラインになった場合にもリカバリ能力を確保できます。

Typical approaches to improve application performance

図1) Rapid Cloningインフラを使用して最大9,000人分の仮想デスクトップを作成

クローニングによる仮想デスクトップの迅速なプロビジョニング:サポートするプロジェクトごとに、適切なツールおよびその他のリソースを含むデスクトップのゴールデンイメージのコピーを、クローニングプロセスで作成します。プロジェクトに従事するエージェントの人数に従って、NetApp RCUで、それぞれの環境のインスタンスをクローニングします。VMware Virtual Desktop Managerに保存されるインポートファイルがRCUによって自動的に作成されるので、すべての仮想デスクトップがVDMに登録され、いつでも使用できる状態になります。この仮想デスクトップは、非持続的な仮想イメージとしてクローニングされます。この設定によって、エージェントが仮想デスクトップセッションからログアウトした時点で、セッション中にデスクトップに加えられた変更が削除されます。非持続的な状態にすることで、サポート環境が確実に標準化され、カスタマイズされたデスクトップ環境のサポートが不要になります。

iSCSIに代わるNFS: 最終的なレイアウトを設計する段階で、iSCSIを使用する方針を見直すことになりました。結局、次のような理由から、ITチームはiSCSIではなくNFSを選びました。

  • LUNまたはボリューム単位の仮想マシン数:NetAppなどのストレージベンダーによるサーバ仮想化の結果を見ると、サーバ仮想化環境におけるLUNごとのサーバVM数は、一般に16~25です。LUNごとの仮想デスクトップ数のサイジングに関する限られたデータを使って見積もったところ、およそ30~75と予想されました。一方、以前私が担当したあるサーバ仮想化プロジェクトでは、NFSボリュームごとに200のサーバVMがサポートされています。
  • ESXサーバへの影響: 最近NetAppが実施したVMwareでのマルチプロトコルパフォーマンステストでは、NFSはiSCSIに比べてESX CPUへの影響が少ないことが判明しています。CPU消費量が少なければ、サーバ単位で使用できる仮想マシンの数は多くなります。
  • プロビジョニング: 何千もの仮想マシンを取り扱う以上、プロビジョニング環境をできるだけ簡素化し、ストレージパフォーマンスの管理に費やす時間をできるだけ短縮したいというニーズがありました。NetApp/VMwareを使用している多くの企業に照会した結果、ITチームは、NFSがパフォーマンス、スケーラビリティ、管理性という点で最適な選択であることを確信しました。

現在までの成果と今後の計画

現在、この会社では1つのポッドを導入して業務に使用しており、2番目のポッドを導入している最中です。ITチームはこれまでの成果に非常に満足しています。

  • クローニングプロセス: クローニングプロセスには現在、2つのNetAppユーティリティが利用されています。read-few-write-many(rfwm)ユーティリティは、ゴールデンデータストア内でゴールデン仮想マシンのコピーを効率的に作成します。NetApp FlexCloneは、ゴールデンデータストアのスペース効率に優れた複数のコピーをクローニングします。このプロセスの所要時間は、データストアに存在する仮想マシンの数と、必要なデータストアのボリュームレベルのコピー数によって異なります。Data ONTAP 7.3.1では、ファイルレベルのFlexCloneテクノロジが使用可能になり、クローニング時間がさらに短縮される見通しなので、その実装を予定しています。
  • ブートパフォーマンス:PAMを導入した結果、キャッシュを使用しない従来の方式と比べて4倍のパフォーマンスが提供されるようになりました。
  • デスクトップパフォーマンス:今までのところ、仮想デスクトップはきわめて良好なパフォーマンスを示しています。大部分のユーザが、ローカルOSを実行するときよりも動作が速いと証言しています。
  • セキュリティ:ローカルファイアウォールで保護する必要のある、潜在的な機密情報の詰まった従来型のデスクトップを在宅エージェントに提供するのは、セキュリティの面で不安があります。仮想デスクトップの場合、企業データセンターの内部で動作するので、このようなセキュリティリスクがありません。エージェントは安全な仮想プライベートネットワーク(VPN)接続を介してデスクトップにアクセスします。仮想デスクトップでクライアント企業に直接、安全にアクセスすることも可能です。たとえば、ソフトウェアサポートを担当するエージェントの場合、ソフトウェア会社の社内にある製品リソース、トラブルシューティング用データベース、トラブルシューティングレポートに、直接アクセスできます。こうした安全なネットワーク接続は、適切なセキュリティのある企業データセンター間で確立されるので、遠隔地のエージェントが自宅からこれらのリソースに直接アクセスする場合よりも、はるかにリスクが少なくなります。
  • 既存のコールセンターをサポート可能:このプロジェクトの主な目標は遠隔地のエージェントのサポートでしたが、同社では既存のコールセンターをサポートする目的で同じアプローチを採用する意向です。仮想デスクトップを使用すると、コールセンターエージェントをサポートするプロセスが大幅に簡易化され、サービスの均一性を確保する上で有効です。すべてのエージェントが同じツールとリソースを使用できるほか、全員に最新情報を常に簡単に提供できるようになります。
  • デスクトップの災害対策:この種の環境では、従業員のデスクトップがミッションクリティカルであるにもかかわらず、広い地域に分散した多数の物理システムについて、適切なレベルの災害対策を提供するのが難しい(または不可能な)場合があります。デスクトップを仮想化すれば、この重要なリソースの保護が容易になります。エージェントのディスプレイが故障しても、代替のハードウェアを使ってデスクトップアクセスを素早く完全に回復することができます。仮想デスクトップの動作そのものが、ピアデータセンターへの複製によって保護されています。
  • リモートハードウェアが不要:在宅勤務するエージェントは、ブロードバンドインターネット接続環境があり、Internet Explorerが稼働するコンピュータを所有していることが条件となるため、エージェント用のハードウェアリソースを企業が支給してサポートする必要はありません。

ITチームは今後18カ月以内に、残りのポッドを導入し、データセンター間での災害対策を有効にする計画です。このプロジェクトが完了すれば、この会社のビジネス(実際にはビジネスの「方法」)が大きく変貌することになるでしょう。

まとめ

現在のような経済状況では、企業は発想の転換による効率性の向上が必要です。このケーススタディで紹介した企業の場合、コールセンタービジネスへのアプローチを全面的に見直した結果、従来よりもはるかに低いコストでITシステムを維持できると同時に、ユビキタスな成長に欠かせない新しい機能とプラットフォームを提供するインフラに結実しました。デスクトップ仮想化とNetApp独自のストレージ機能の組み合わせが、この環境を現実のものにしました。


Trey Layton Trey Layton
NetApp、システムエンジニア

Treyは2006年、NetAppに入社しました。専門はVMwareによる次世代データセンターの設計です。ネットワーキングと仮想化に関する豊富な経験をバネに、現在のネットワークストレージの進化によく適応しています。IT業界で18年に及ぶTreyのキャリアは、アメリカ中央軍の陸軍で中東の米国特殊作戦部隊をサポートすることから始まり、その後、Eastman Kodak、GE、Cisco Systemsで、ネットワークコンサルティングとシステムエンジニアリングの要職を経験しています。


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