NetApp Tech OnTap
統合型データ保護のメリットとは?
〜高コストな従来型アプローチとの比較〜

包括的なデータ保護には、単なるバックアップやリストア機能を越える多くの必要条件があります。重要なビジネス・データのアクセシビリティを確保するには、次の点を考慮する必要があります。

  • 高可用性
  • ディザスタ・リカバリ(災害復旧)
  • ビジネス継続性
  • アーカイブとコンプライアンス

これらの機能を確保するために、多くの企業がいくつものソリューションに頼っているようです。高可用性、バックアップ/リストア、ビジネス継続性、アーカイブといった目的別に、それぞれ異なるベンダーを選択している企業もあります。そのために管理が著しく複雑化し、莫大な出費を強いられる結果になっています。

統合型データ保護戦略は、重要なデータ保護機能をストレージに集約することで、このような複雑性を緩和し、より挑戦的なRecovery Point Objective(RPO:目標復旧時点)とRecovery Time Objective(RTO:目標復旧時間)を設定可能にすると同時に、コストを削減し、管理に必要な労力を最小化します。

この記事では、統合型データ保護について概要を説明します。新規あるいは変更されたファイルの識別、データの移動と保存といった観点から、従来のデータ保護アプローチとプロセス・フローを比較します。さらに、基幹アプリケーションにおける統合型データ保護の価値についても説明します。

統合型データ保護とは?

従来型のアプローチによるデータ保護は、コストが高く、ストレージ・システムの機能をフルに活用することができません。サーバOSの最上位にあるデータ保護アプリケーションが、データをセカンダリ・ストレージにコピーするだけです。これらのアプリケーションは、基盤となるストレージに組み込まれた特殊なデータ・キャプチャ機能や移動機能を利用しないので、動作が遅く、結果的にRPOやRTOが制限され、他のアクティビティに影響を及ぼす可能性があります。

統合型データ保護は、より効率的なアプローチを採用しており、データを別の目的にも使用できるフォーマットのまま保持することが可能です。統合型データ保護では、ストレージ・システムに高可用性、バックアップ、コンプライアンス機能が組み込まれています。すべての機能が連携するので、データ保護のさまざまな目的や要件に応じて、同じデータ・セットを使用できます。このアプローチには、次のような利点があります。

  • 重要なデータ保護機能がすべて1つのプロバイダから提供されるので、実装と運用中の管理が容易になると同時に、相互接続性が向上します。
  • ストレージ機能をフル活用し、パフォーマンスと機能性の向上を実現します。
  • データ・コピーを別のタスクに利用することができ、迅速な投資回収が可能です。

データ保護のフローを検証すると、この違いがはっきりと分かります。

データ保護アプローチの比較

ほとんどのデータ保護動作(バックアップ、レプリケーション、アーカイブ)には、次のような共通のアクティビティがあります。

  • データの変更/新しいデータの識別
  • データの移動
  • データの保存

変更/新規データの識別

バックアップなどの従来型のデータ保護処理では、データの移動を開始する前に、新しいファイルや変更されたファイルをすべて識別する必要があります。従来型のバックアップ・プロセスでは、これが長い時間を要するファイル収集プロセスとなり、「ファイル・システム・ウォーク(ファイル識別処理)」を招くことになります。各ファイルのタイムスタンプを最新のバックアップ日時と比較し、変更のあったファイルを識別し、ファイル・カタログを作成してからでないと、実際のデータ移動を実行できません。非常に大容量のファイルシステムでは、このプロセスに数十分、あるいは数時間を要する場合があります。

統合型データ保護では、ストレージ・システムに組み込まれたSnapshotテクノロジを利用します。Snapshotは、前回のSnapshotを実行したのちに、変更のあったデータ・ブロック(ファイル全体ではなく)へのポインタのインデックスを即時にキャプチャすることで、時間のかかるプロセスを回避します。そのため、データ移動を非常にすばやく開始することが可能です。

データの移動

データを移動する機能は、データを識別する機能と密接な関係があります。従来のテクノロジでは、単純に変更されたファイルを識別して変更箇所が1ブロックしかない場合でもファイル全体をコピーするため、ネットワーク帯域幅とセカンダリ・ストレージを大幅に消費します(従来の方式で消費されるストレージ容量を減らすために、ターゲットでの重複排除が広く行われるようになりましたが、RPOやRTOの改善には役立っていません)。

統合型データ保護では、スナップショット・プロセスでキャプチャされたポインタ・マップと変更されたブロックだけが転送されるので、スピードと効率が高まります。ネットワーク帯域幅の観点では、バックアップを即時にオフサイトに複製する必要がある企業で、コストの高いWAN接続のオーバーヘッドを最小化しなければならない場合、この方式が特に有効です(19.4 MBpsを提供するOC-3の場合、コストは年間約2万7千ドルに上ります)。

データの保存

データの保存に関しては、ほとんどのソリューションが独自のフォーマットを利用しているため、リカバリ以外の目的にデータを使用するのは困難もしくは不可能です。バックアップを必ずテープに保存していた時代には、バックアップ・アプリケーションがテープ・チェンジャやドライブと連動しなければならなかったため、この点についてはそれほど意識されませんでした。

統合型データ保護では、オープン・ファイルシステム・フォーマットでデータ・コピーを保存する必要があります。そのため、次のような利点が得られます。

  • ユーザが管理者の手を借りずに、簡単に自分のファイルを見つけ出して回復することができます。
  • 開発/テスト、データ・マイニング、ディザスタ・リカバリ、コンプライアンスなどの目的でバックアップ・データを活用できます。

従来型のデータ保護では、バックアップ・データの変更によってリカバリ不能に陥る可能性を抑えることが目標とされていました。統合型のデータ保護では、バックアップ・データは読み取り専用で、読み書き処理から切り離された状態にあることが保証されます。

たとえば、NetApp® FlexClone®テクノロジを使用すると、データ・セット全体をコピーせずにセカンダリのデータ・コピーを作成し、これを他の目的に利用することができます。これらの書き込み可能な「シン・クローン」は、変更があった場合にしか余分なストレージ・スペースを消費しません。したがって、これらのクローンは非常にスペース効率が高く、ディスクベースのバックアップやレプリケーションに使用しているセカンダリ・ストレージを十分に活用することが可能になります。

保存したデータを眠らせておく必要はありません。統合型データ保護では、バックアップ・イメージをディスクやテープに保存したまま埃をかぶらせておく必要はなく、これらのイメージを他の業務に活用し、データ保護チェーンをさらに拡大することが可能です。バックアップ・イメージをディザスタ・リカバリ用に複製した後、コンプライアンス目的でロックするといった処理が可能ですが、その際、それぞれ個別のアプリケーションを管理したり、複数のプロセスを実行してサーバ・リソースを大量に消費し、ビジネス・アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を及ぼしたりすることもありません。

アプリケーション・データの保護とリカバリ

継続的に動作するアプリケーションには、データ保護に関して特殊な要件があります。ほとんどのアプリケーションは、パフォーマンス上の理由から、データをメモリにキャッシュしています。したがって、矛盾のない最新の状態を保つには、単純にディスク上のアプリケーション・データをコピーするだけというわけにいきません。この理由から、市販されている多くのアプリケーションとデータベースでは、アプリケーションを停止しなくても矛盾のないバックアップまたはコピーを作成できる、ホット・バックアップ・モードが提供されています。ホット・バックアップ・モードは、稼働中のアプリケーションのパフォーマンスを低下させます。そのため、アプリケーションの負荷が少ない時間帯にこの処理を実行するか(これは必ずしも可能とは限りません)、または処理を非常に速く実行する必要があります。

一般に、従来型のデータ保護ソリューションは、テープであろうとディスクであろうと、完了までに長い時間がかかるため、必然的にオフピークの時間帯に実行しなければなりません。

対照的に、統合型データ保護では、アプリケーションをホット・バックアップ・モードにし、スナップショットを作成し、通常の動作に戻るという一連の流れが、ほんの数分で実行可能です。これは次のように多大なメリットをもたらします。

  • 1日に何回もスナップショットを作成し、他のソリューションに比べてずっと多くのリカバリ・ポイントを提供できます。
  • 矛盾のないスナップショットを作成した後、プライマリ・ストレージに保存して即時のリカバリに使用することも、セカンダリ・ストレージにコピーすることも、別のサイトに複製してディザスタ・リカバリに備えることもできます。

アプリケーションのリカバリ

従来のアプリケーション対応バックアップでは、バックアップを作成した時点からアプリケーションを再開できるよう、データが矛盾のない状態で残されます。データベースなどのアプリケーションを従来型のバックアップから回復する必要が生じた場合、まず最新のバックアップをリストアし、次に一連のトランザクション・ログを適用して、データベースを最新の状態にします。このように複数のステップからなるプロセスでは、作業ミスなどの問題が発生し、処理が長引く可能性が少なくありません。

統合型データ保護では、アプリケーション・リカバリを実行する際に管理者の手を煩わさず、障害が発生する直前の状態に自動的にアプリケーションを回復することができます。特定時点の状態に戻すために必要なすべてのステップは、人的な作業を伴わずにソフトウェアによって実行されます。したがって時間が節約され、ユーザ・エラーの可能性がありません。

NetAppのソリューション

NetAppは、スペース効率に優れたSnapshot™テクノロジに基づく、統合型データ保護ソリューションのスイートを提供しています。NetApp SnapVault®ソフトウェアを使用すると、Snapshotコピーをセカンダリ・ストレージにバックアップし、オンラインで長期にわたって保存できます。変更されたブロックだけが転送されるので、ネットワーク帯域幅を効率的に利用することが可能です。Open Systems SnapVaultを使用すれば、標準のWindows®、Linux®、UNIX®サーバのストレージを含めることも可能です。

ディザスタ・リカバリについては、NetAppはSnapMirror®による効率的なレプリケーション(やはり変更されたブロックのみを複製)を提供しています。データセンターまたはキャンパスにおける高度なデータ保護には、NetApp MetroClusterを使用して、最重要アプリケーションの同期ミラーリングによる継続的なデータ可用性を実現できます。

アプリケーション・バックアップは、Oracle®、SAP®、Microsoft® Exchange、SQL Server®、SharePoint®、VMware®など人気の高いアプリケーションと統合するSnapManager®スイートによって提供されます。これらのツールは、アプリケーションをホット・バックアップ・モードにして、矛盾のないSnapshotコピーをキャプチャした後、わずか数秒で通常の動作を再開することができ、バックアップとディザスタ・リカバリの基盤としての役割を果たします。個々のストレージ管理機能をアプリケーション管理者に委任できるので、効率が向上します。

アーカイブとコンプライアンス関連のニーズには、NetApp SnapLock®を使用して、プライマリまたはセカンダリ・ストレージのNetAppボリュームを書き込み不可、消去不可なストレージに切り替えて、所定の期限までファイルの改ざんや削除を防ぐことができます。図1に、NetAppの統合型データ保護の全体像を示します。

図1)NetAppの統合型データ保護ソリューションの全体像

図1)NetAppの統合型データ保護ソリューションの全体像

まとめ

統合型データ保護では、次のことが可能です。

  • バックアップまたはレプリケーションが必要な新規または変更データを即時に識別
  • データを効率的に移動
  • データをオープン・フォーマットで効率的に保存
  • アプリケーションと矛盾しないバックアップによる迅速なリカバリ

統合型データ保護ソリューションでは、従来のデータ保護ソリューションよりもはるかに多くのメリットが得られます。データ保護のための高速かつ完全な統合型のアプローチは、ほぼすべてのデータセンターで有利に作用します。トランザクション処理が非常に多い環境では、統合型データ保護を導入すると、従来よりも頻繁にリカバリ・ポイントを作成し、迅速なリカバリが可能になるため、特に著しいメリットがあります。

統合型データ保護は、クラウド・コンピューティングという最新のトレンドにも理想的です。社内外の利用者向けに、管理しやすく拡張性の高い、一貫性のあるデータ保護サービスを提供できる能力は、完全なクラウド・インフラを実現するための重要な要素です。NetAppは、包括的なデータ保護における複雑性とコストの問題を解決する、統合型データ保護のあらゆる機能を提供しています。


David A. ChapaDavid A. Chapa
バックアップ/リカバリ・ソリューション担当ディレクター、NetApp

Davidは業界で20年以上の経験を有し、データ可用性、ディザスタ・リカバリ、ビジネス回復プラクティスを専門としています。『Implementing Backup and Recovery: The Readiness Guide for the Enterprise』の共著者であり、バックアップとリカバリ、ディザスタ・リカバリ、ビジネス回復に関する第一人者と見なされています。

Nathan MoffittNathan Moffitt
バックアップ/リカバリ・ソリューション担当シニア・マネージャー、NetApp

NathanはIT業界で13年以上の経験があり、サーバ、ストレージ、ネットワーキング、データ保護テクノロジに取り組んできました。世界中のFortune 500企業で採用されているソリューションの設計と実装に携わるかたわら、データ保護と共有ファイルシステムについて、さまざまな記事を執筆しています。


関連情報