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ストレージ戦略におけるFCoEとiSCSI
NetApp Innovator Summit
“逆立ちのSAN”で切り拓く新次元

ネットアップは、発想の転換ひとつで、優れた信頼性・柔軟性とパフォーマンスを両立させたSAN環境の構築を可能とするストレージソリューションを実現しました。

「NetApp Innovator Summit」では、先進的な日本でのユーザ事例や最新技術動向など、発想の転換の鍵を皆さまにご紹介いたします。

■開催日:2009年9月10日(木)
■開催場所:ザ・プリンスパークタワー東京

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Fibre Channel over Ethernet(FCoE)の出現に伴い、ストレージおよびローカル・エリア・ネットワークの両方のニーズに、1つのイーサネット・ファブリックへの統合で対処することが可能になっています。しかし、これはFCoEおよびiSCSIという2つのオプションのうち、どちらをイーサネット・ネットワークで使用するかという選択を迫られることでもあります。両者はどのように違うのか、どのような場合にどちらのプロトコルを使用すべきかという問題が提起されます。

FCoEとiSCSIは何が違うのか

FCoEレイヤは、iSCSIで使用されているTCP/IPレイヤを置き換え(図1)、Data Center Bridging(DCB)イーサネット拡張機能を必要とします。電子電気学会(IEEE)のDCBワーキング・グループは、「トラフィック干渉」(すなわち、1つのクラスによる別のクラスのトラフィックへの悪影響)を引き起こさずに、さまざまなトラフィック・クラスの要件を単一のネットワークで満たせるようにする目的で、IEEE 802規格を拡張しました。

図1)FCoE、iSCSI、およびその他のネットワーク・ストレージ・プロトコルの比較を示すブロック図

図1)FCoE、iSCSI、およびその他のネットワーク・ストレージ・プロトコルの比較を示すブロック図

FCoEはInternet Protocol(IP)レイヤを使用せずに設計されているため、IPによるルーティングが本質的に不可能です。ただし、FCIPなど、すでに確立済みのプロトコルを使用して、FCoEルーティングを実行することが可能です。表1に、FCoEとiSCSIの違いを要約します。

機能FCoEiSCSI
既存のFCインフラとイーサネット・ネットワークとの直接的なインターフェイスが可能×
既存のFC管理構造をイーサネット上で利用×
ロスレス・イーサネットによるサービス品質(QoS)の改善××
イーサネットに関する広く普及したスキルセットの活用××
1GbEのサポート×
ネイティブのIPルーティング×

表1)FCoEとiSCSIの比較

iSCSIプロトコルは、パケット・ロスが発生するネットワークに実装することができます。また、iSCSIは1ギガビット・イーサネット(1GbE)で動作可能です。一方、FCoEには、10ギガビット・イーサネット(10GbE)が必要です。またFCoEには、それぞれ優先順位の異なるトラフィック・クラスに基づいて、ポーズ・フレーム要求と、優先順位に従ったPause Flow Control(PFC)を適切に実装するインフラ・コンポーネントを備えた、ロスレス・ネットワークが必要です。PFCの基本概念は、輻輳が発生した場合、優先順位の高いトラフィックの伝送を許可すると同時に、優先順位の低いトラフィックを一時停止することです。

FCoEを使用するには、10GbEスイッチがDCB(サービス・クラス、輻輳制御、管理など一連の拡張機能を含む)をサポートすることが前提です。さらに、FCoEを使用する場合、FCペイロードが2,112バイト(分割不可能)であることから、ジャンボ・フレームも必要です。iSCSIには、ジャンボ・フレームは不要です。

FCoEとiSCSIのどちらを使用するか

最終的にどちらのプロトコルを選ぶかの判断には、FCoEの方がiSCSIよりもインフラに関する要件が厳しいという事実が影響すると考えられます。また、重要アプリケーションのベンダーが、どのインフラをサポートしているかによって、プロトコルが決定される場合もあります。

その他の条件として、主に次のようなニーズがある場合、おそらくiSCSIを選ぶことになるでしょう。

  • 低コスト
  • 使いやすさ

iSCSIは、既存のインフラをほとんどアップグレードせずに使用できる可能性が高いと考えられます。FCoEのネットワーク要件を考えると、大幅なアップグレードが必要になる場合があり、近い将来、コンバージド・ネットワーク・アダプタ(CNA)ハードウェアもおそらく必要になるでしょう(長期的には、現在のiSCSIと同じように、既存のNICをソフトウェア・イニシエータと組み合わせて使用できます)。

iSCSIはTCP/IP上で動作するので、ネットワーク管理方法になじみがあり、簡単にセットアップして管理できると予想されます。FCoEは、TCP/IPを使用しません。管理方法は従来のFibre Channel SAN(FC SAN)と非常によく似ています。そのため、FC SANの管理に習熟していなければ管理が問題になります。

逆に、FC SANの経験が豊富であれば、次のようなニーズがある場合は特にFCoEを選ぶのが妥当です。

  • ミッションクリティカルなアプリケーションのサポート
  • 可用性
  • 最高のパフォーマンス

このような条件が要求される環境に、iSCSIがまったく向かないというわけではありません。ただし、Fibre Channelは、長年にわたってミッションクリティカルなSAN環境で使用されてきた実績があります。FCoEは、既存のFC SANと同じ機能と完全な互換性を提供します。単にFibre Channelの物理レイヤを10GbEで置き換えただけです。

FCoEがiSCSIと比べて、どの程度パフォーマンス的に有利であるかについては、まだ検証が必要です。どちらも10GbEを利用できますが、iSCSIではTCP/IPのために遅延時間が長くなる可能性があります。そのため、ある種の環境では、FCoEの方がパフォーマンス面でやや有利と考えられます。

上記のガイドラインは、iSCSIおよびFC SANに関する現行の慣例と合致しています。今のところ、ビジネスクリティカルなWindows®環境(ほとんどが1GbEで稼動)でのiSCSIの最も効果的な用途は、ストレージ統合です。一般に、大企業のセカンダリ/ティア3のデータセンター、中小企業のコア・データセンター、リモート・オフィスで、iSCSIが導入されています。

大企業のプライマリデータセンターでは、Fibre Channelを導入するケースが圧倒的に多く、一般にUNIX®およびWindows環境のミッションクリティカルなアプリケーションが稼動しています。よく見られるワークロードの例としては、データ・ウェアハウジング、データ・マイニング、エンタープライズ・リソース・プランニング、OLTPなどがあります。

導入シナリオ

FCoEとiSCSIをいつ、どのような環境で使用するかを判断する際、予想される導入シナリオをそれぞれ詳しく検証してみると、さらに役立つ指針が得られます。

シナリオ1:FCストレージに大きく投資してきた既存のデータセンター。プライマリデータセンター用のSANファブリックとしてFibre Channelが選ばれてきた実績があるため、ほとんどの大規模データセンターには、専用のFibre Channelストレージが個別に装備されています。このようなデータセンターでは、既存のFC SANおよび管理インフラへの投資を活かすために、FCoEネットワークを検討するとよいでしょう。

FCoEへの移行は、エッジから始めるとよいでしょう。エッジ部分のサーバやスイッチを新規導入あるいは更新することによってFCoEおよびDCB拡張機能をサポートし、FCストレージにある既存のデータへのアクセスを提供します。

シナリオ2:新設のデータセンター。新設のデータセンターの場合、FCoEとiSCSIのどちらでも、必要なI/O負荷を満たせる可能性があるので、どちらが適しているかは一概には言えません。イーサネット・インフラを計画中であると仮定すれば、運用開始の時期や、既存のITスタッフのスキルセットが決定要因になります。データセンターを今すぐ、または近い将来オンラインにする予定であれば、iSCSIが最適な選択肢になります。一方、データセンターの運用開始が6ヶ月以上先であれば、FCoEが非常に有力な選択肢です。

FC SANの経験が豊富であれば、既存のスタッフと専門知識を活かせるという点で、FCoEを検討するとよいでしょう。一方、Fibre Channelの経験が乏しい企業では、イーサネットとTCP/IPの専門知識を活かすために、FCoE上のiSCSI運用を選択するとよいでしょう。

シナリオ3:既存のデータセンターでさまざまなストレージ(DAS、FC、NAS)を使用し、近い将来、データセンターの統合が必要な場合。次のような理由から、統合を計画している場合が考えられます。

  • サーバ仮想化によるコストの削減
  • 環境コスト(電力および冷却)の削減
  • 管理性の向上(人件費の削減)
  • 顧客向けのサービス・レベル(データ・アクセス能力、テスト/開発)の向上
  • データセンター・スペースの制約

一般に、ストレージ・プロビジョニングやデータ管理に関する従来の慣例が、選択基準になります。NASが主力となっているネットワークでは、ブロック・データへのネットワーク・アクセスを追加するために、iSCSIを選ぶのが妥当です。一方、FC SANが主力の環境では、FCoEを選ぶのが妥当です。というのは、FCoEなら、SAN管理およびインフラ用の既存の機器、ツール、およびスキルを利用することができ、既存のインフラとの互換性が提供されるからです。

シナリオ4:中小規模のデータセンター。中小企業の場合、FCoEとiSCSIのどちらを選ぶかの判断は、主に予算、ITスタッフのスキルセット、およびアプリケーションの要件が基準になります。iSCSIは、このセグメントで使用されている大部分のビジネス・アプリケーションのパフォーマンス要件を満たすと同時に、優れた価値を提供します。高可用性、パフォーマンス指向のデータベースといった要件がある場合にも、FCoEとiSCSIは両方とも有力な選択肢です。

シナリオ5:リモート・オフィス環境。リモート・オフィスが各地に分散していることを考慮すると、iSCSIにはネイティブのIPルーティングというメリットがあるため、FCoE(何らかの形式のイーサネット・ブリッジングが必要)よりも長距離に対応できます。管理が容易であるという点も、IT専門技術者が不足するリモート・オフィスには重要な条件です。したがって、リモート・オフィス向けにはiSCSIが最適な選択肢になりそうです。

まとめ

FCoEについては、インフラへの導入の合理性を検討したり導入場所を判断したりしている段階では、短期的には戸惑う場面もあるかもしれませんが、その長期的なメリットは明らかです。複数のネットワークを1つのイーサネット・ファブリックに統合すれば、アプリケーション・セットに最適なプロトコルの選択肢を減らすことなく、資本支出とネットワーク運用コストを大幅に削減できる可能性があります。

ニーズに合わせてiSCSI、FCoE、または両者の組み合わせのいずれを選択する場合にも、NetApp®ユニファイド・ストレージは、1つのストレージ・システムからすべてのストレージ・プロトコルを同時にサポート可能です。NetAppストレージは、ストレージ・プロトコルに関するニーズの進化に応じて、重要なセーフティ・ネットを提供します。


Silvano GaiSilvano Gai
フェロー、Cisco

Silvanoはコンピュータおよびネットワーク技術者として27年の経験があります。ネットワーキングに関する著作が数冊あり、担当した特許技術は30件に上ります。Silvanoは複数のCiscoスイッチ・ファミリーの設計に参加し、その中にはデータセンター向けのNexusファミリーも含まれます。彼は現在、スタンフォード大学でFCoEの講義を行っています。

Silvano GaiMike McNamara
プロダクト・マーケティング担当シニア・マネージャ、NetApp

Mikeはコンピュータ業界で20年に及ぶマーケティング経験を有し、そのうち15年間はストレージを専門としています。Adaptec、EMC、Hewlett Packardに在籍した後、NetAppに入社して3年以上になります。MikeはFibre Channel Industry Association(FCIA)マーケティング部会の議長も務めています。


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