ネットワーク統合:データ・センターへのFCoEの導入

この記事は、過去にTech OnTapに掲載された、一連のFCoEに関する特集記事の続きとして書かれています。以前の特集記事には、『FCoE:ファイバチャネルの未来』(Nick Triantos著、2009年1月号掲載)と、『ストレージ戦略におけるFCoEとiSCSI』(Mike McNamara/Silvano Gai著、2009年8月号掲載)があります。背景情報の詳細については、この2つの記事を参照してください。[Tech OnTap編集部]

多くの企業データ・センターでは、LANとIPデータ・トラフィック用にイーサネット・ネットワークを使用しており、それとは別に、Storage Area Network(SAN;ストレージ・エリア・ネットワーク)トラフィック用のFibre Channel(FC;ファイバ・チャネル)ネットワークも利用されています。データ・センターで10ギガビット・イーサネット(10 GbE)の採用が増えたことに加え、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)と新しいロスレス10 GbEテクノロジの登場によって、FCデータ・フローを、LANやIPデータ・トラフィックと同一のイーサネット・インフラ上に統合することが可能になっています。ネットワーク統合は、FCストレージへの既存の投資を保護できるだけでなく、データ・センター関連のコストと複雑性を軽減し、ネットワーク管理を簡易化する効果もあります。

FCoE の利用には大きなメリットがあるにもかかわらず、多くの企業ではこのテクノロジの導入を保留しています。この記事では、FCoEに関するFAQにお答えしたあと、段階を踏みながら徐々にFCoEに移行する方法を紹介してまとめとします。

ITの課題:複数のネットワークの維持

データ・センターでは、ほとんどの場合、用途別に複数のネットワークが維持されています。

  • イーサネットはLANで使用され、短距離、長距離、またはクラスタ構成のコンピューティング環境で、少量の情報を伝送します。イーサネットは、企業内LANやVoice over IP(VoIP)テレフォニーのほか、NFS、CIFS、iSCSIを使用したストレージなど、さまざまな種類のデータをサポートする、コスト効率のよい効率的な手段を提供します。
  • ファイバ・チャネルはSANで使用され、ネットワーク・ブート、メール・サーバ、大量のデータを扱う大規模データベースなど、各種のアプリケーションにブロックI/O機能を提供します。FC SANは、ストレージの統合、ストレージ管理の一元化、パフォーマンス向上、信頼性向上、ビジネス継続性に最適なソリューションです。

IPネットワークとFC SANは、それぞれデータ・センターに不可欠な役割を果たしますが、設計と機能の面で異なります。両ネットワークには独自のセキュリティ・ニーズとトラフィック・パターンがあり、専用の管理ツールセットが使用されます。各ネットワークは専用インフラ上で構築および維持され、サーバとストレージ・システムごとに別々のケーブル配線やネットワーク・インターフェイスが備わっています。

2つの独立したネットワークを管理することは、データ・センターの複雑性とコストを増大させます。イーサネット・ネットワークとFCネットワークを統合することにより、FCインフラへの投資を無駄にすることなく、データ・センターをより効率化できます。

FCoE

FCoEは、1本のユニファイド・イーサネット・ケーブル上で、IPトラフィックとFCトラフィックを伝送できるテクノロジです。FCoEを使用すれば、統合されたネットワークでLANのデータとSANのデータをサポートすることで、データ・センター内の機器とケーブル配線を削減し、同時に、こうした機器に付随する電力や冷却の負荷を低減できます。また、ユニファイド・ネットワークへの統合を行うと、サポートするポイントが少なくなり、管理負荷の軽減にも役立ちます。

FCoEは、一般的にData Center Bridging(DCB)またはConverged Enhanced Ethernet(CEE)と呼ばれている、拡張10 GbEテクノロジを通じて提供されます。FCiPやiFCPといったトンネリング・プロトコルは、IPを使用してFCトラフィックを長距離伝送しますが、FCoEはレイヤ2カプセル化プロトコルであり、イーサネット物理伝送路を使用してFCデータを送信します。FCoEは、TRILL(サイドバーを参照)のほか、10ギガビット・リンクでロスレス・ファブリック機能を提供する能力など、イーサネット標準の最近の発展と今後の機能追加によって実現されます。

FCoEは、単一のネットワーク・ストレージ・テクノロジへの統合によって、サーバI/O、ネットワーク、ストレージ・インターコネクトの集約を図る組織に大きな価値をもたらします。大規模な投資を行ったデータ・センターでは、管理対象の機器数を減らすという最も単純な変化さえもが、大きなメリットをもたらす可能性があります。また、サーバからスイッチ、さらにはストレージに至るまで、同一のネットワーク・ファブリックを共有することで専用ネットワークを使用する必要がなくなり、既存のインフラへの投資を保護して、なじみのある従来のIT操作手順やプロセスをそのまま利用できるため、TCOが大幅に削減されます。

FCoEのコンポーネント

FCoEの実装には、次のコンポーネントが必要です。

  • Converged Network Adapter(CNA;統合ネットワーク・アダプタ):CNAは、イーサネットNICとファイバ・チャネルHBA(ホスト・バス・アダプタ)の両方の機能を提供します。CNAを使用すると、購入するサーバ・アダプタ数が減り、ポート数を削減できるとともに、相当数のケーブルが不要になります
  • FCoEケーブル:現在選択可能なFCoEケーブルは2種類あります。FC SANで一般に使用される光ケーブルと、新しいタイプのTwinaxカッパー・ケーブルです。FCoEツイン・ケーブルは消費電力が少なく、価格も比較的安価ですが、10メートル未満の長さにしか対応しません。そのため、トップオブラック・スイッチをLANに接続する場合は、大抵光ケーブルが必要になります
  • FCoEスイッチ:サーバをストレージ・アレイやネイティブのFCoEストレージ・システムに接続するには、FCoEスイッチかDCBスイッチが必要です。FCoEの早期導入企業では、トップオブラック・スイッチか、可能な場合はエンドオブロー・ブレードを利用できます
  • FCoE/DCBストレージ・システム:FCoEと、統合されたトラフィックをネイティブでサポートするストレージ・システムです。FCoEスイッチへのファイバ・チャネル接続と、そのスイッチからホスト・サーバへのFCoE接続をサポートするストレージ・システムもあります

既存のサーバ、ネットワーク、ストレージへの影響

FCoEを使用する場合、既存のITインフラの変更は最小限で済みます。イーサネット物理層とデータリンク層上でデータを伝送するという設計は、ファイバ・チャネル・テクノロジにとって自然な展開だといえます。ファイバ・チャネルの上位層を利用することにより、導入済みのFC SANとの共存が可能となり、FCoEの導入が簡易化されるうえ、エンタープライズ環境では実績のあるファイバ・チャネルのソフトウェア・スタックや管理ツールのほか、既存のトレーニングの活用が可能になります。最も重要なのは、アプリケーションを変更しなくても、FCoEのパフォーマンスを活用し、潜在的なコスト・メリットが得られる点です。

組織上の問題点

従来のデータ・センター環境では、FC SANを所有し運営するのがストレージ・グループであるのに対し、イーサネットLANを所有し運用するのはネットワーク・グループです。この2つのグループは歴史的に別のものとして扱われてきたため、データ・センターへのFCoEの導入は、ITの一部の慣例に対して価値の転換をもたらす可能性があります。

FCoEの採用にあたっては、データ・センターにおける発展の経緯、体制面、運用面での懸念事項とプロビジョニング・パラダイムが、組織上の障害となる可能性があります。FCoEネットワークの適切な制御メカニズムを整えるため、何らかの新しいビジネス・プロセスと手順を導入する必要が生じるかもしれません。さらに、購買モデルを変更する必要性や、イーサネット・ネットワークの信頼性向上の必要性も考えられます。

FCoEを通じてFCとIPが統合されることにより、従来別々だった2つのネットワーク領域に重なり合う部分が生じるようになりました。FCoEの実装に、追加のITトレーニングはほとんど必要ありません。FCoEでは、社内のIPデータ・チームやFCチームが持つ、ITに関する既存の専門知識とスキル・セットを活用できます。管理アプリケーションが提供するロールベースの管理機能を利用することで、FCグループが引き続きSANの所有者として運用を担当し、IPネットワーク・グループも引き続きデータ・ネットワークの所有者として運用を担当できます。

導入すべき場所

FCoEの利用には明らかに大きなメリットがあるにもかかわらず、このテクノロジの導入を保留されている読者もいることでしょう。幸運にも、FCoEによる統合プロセスにはシステムダウンが伴わず、「大がかりな」アップグレードも必要ありません。FCoEへの移行は、段階的なアプローチで徐々に実施できます。FCoEの初期導入は、仮想化されたティア3アプリケーションと一部のティア2アプリケーションが導入されているWindows®環境やLinux®環境がほとんどで、そうした環境に新たにサーバを導入する場合、その一環として行われると思われます。

FCoEは比較的新しいテクノロジであるため、初期導入はアクセス・レイヤ・サーバのI/O統合に対して行うのが最適です。ストレージ・トラフィックは新しいロスレス・イーサネットを必要とすることから、10 GbE伝送路にも、リンク層のマルチパス化とマルチホップ機能が必要になります。こうした機能は現在開発中で、2010年の後半には利用できるようになる見込みです。これらの機能を通じ、より大規模なFCoEネットワークの導入が可能となれば、アクセス・レイヤでのサーバの接続とI/O統合以外にもFCoEの利用範囲を拡張できるようになります。

次に、FCoEの導入場所を決定する際のベスト・プラクティスを示します。

  • ベースとなるファイバ・チャネルのスキルと、ファイバ・チャネル・インフラがすでに整っている環境を選択する
  • 「完全新規」の導入環境を用意し、新しいインフラを導入してデータの増大に対応する
  • FCoEへの移行は、ティア3またはティア2のアプリケーションから開始することを検討する。ラボ環境や、さほどミッションクリティカルではないティア3環境で経験を積んだあと、その経験を生かして、ティア2のアプリケーションと、状況に応じてティア1のアプリケーションを移行する
  • FCoEの実装は、トップオブラック・アクセス・レイヤ・サーバのI/O統合側から開始する。この実装は、ネイティブのFCoEストレージの導入と組み合わせて行うことも可能。アクセス・レイヤ・サーバ以外へのFCoEの拡張は、マルチパス技術標準とマルチホップ技術標準(TRILL)が実用化されるまで保留するのが望ましい

移行の開始

FCoEへの移行は段階的なアプローチで徐々に達成できます。一般的にはエッジまたはスイッチから開始して、ネイティブのFCoEストレージへと移り、最終的に企業ネットワークのより深い部分へと移行を進めます。

次の図は、ネットワーク統合を開始する前の、典型的なデータ・センター・アーキテクチャを表しています。FC SAN(オレンジの線)はパラレル・ネットワークで、イーサネットIP LAN(青い線)で使用されるものとは別に、ネットワーク・ポートとケーブル配線を用意する必要があります。


図1)DCB/FCoEを実装する前の典型的なデータ・センターのレイアウト

フェーズ1:エッジまたはスイッチでのDCB/FCoEへの移行
統合イーサネット、またはユニファイド・イーサネット・インフラへの移行は段階的に実施でき、多くの場合は、ROIの向上が最も見込まれるエッジ(緑の線)で開始されます。FCoE統合により、サーバとエッジ・スイッチのポート数を半分に減らすことができ、資本コストと運用コストが大幅に削減されるうえ、管理性も向上します。


図2)フェーズ1:エッジまたはスイッチでのFCoEへの移行

フェーズ2:ネイティブのDCB/FCoEストレージ・システムへの移行
ホストからネットワーク、さらにネイティブのDCB/FCoEストレージにまで対応するエンドツーエンドのDCB/FCoEソリューションに移行します。ラック・サーバを使用した構成が一般的で、各サーバはCNAを使用して、トップオブラックのDCBスイッチまたはFCoEスイッチと接続されています。このスイッチは、FCoEと他のプロトコルをサポートするユニファイド・ストレージに接続されています。FCoEと統合トラフィックはインフラ全体でサポートされ、最適なコスト削減効果が得られます。


図3)フェーズ2:ネイティブのFCoEストレージへの移行

フェーズ3:コアでのDCB/FCoEへの移行
エッジまたはスイッチにFCoEを実装したら、次はコア(緑色の線)の部分で、包括的な10 GbE拡張イーサネット・ネットワークへの移行に取り掛かることができます。さらに、FCoEをサポートするストレージにも、徐々に移行を進めます。最終的な目標は、ホストからファブリック、さらにはストレージに至るまで、複数のトラフィック・タイプ(FCoE、iSCSI、NFS、CIFS)をサポートし、同じイーサネット・インフラを共有する10 GbEイーサネット・インフラです。


図4)フェーズ3:エッジからコアおよびストレージにまで至るエンドツーエンドのFCoE

まとめ

FCoEには、Fibre Channelプロトコルと、拡張された10ギガビット・イーサネット物理伝送路という2つの先進的なテクノロジが組み合わされており、SAN接続とネットワーク構築において優れた選択肢となります。現在、IPとFCの2つのストレージ・ネットワークで使用されている管理ツールや管理方法は、そのままFCoEでも利用できるため、管理を簡易化して、FC SANへの投資を保護することができます。

こうした統合ネットワークの利点により、データ・センターでの10 GbEの採用はさらに進むでしょう。FCoEには複雑さの低減、効率化、利用率改善といった効果のほか、最終的には必要な電力、スペース、冷却コストの削減も期待でき、データ・センター統合という新たなトレンドを加速させると考えられます。

新しいデータ・センターの構築や、既存のストレージ・ネットワークのアップグレードをお考えであれば、FCoEを真剣に検討してみてはいかがでしょうか。イーサネットを中心に段階的なアプローチでデータ・センターを統合することで、既存のFCインフラへの投資を保護しながら、時間をかけてイーサネット・インフラを完成させることができます。


Mike McNamara
プロダクト・マーケティング担当シニア・マネージャー
NetApp

Mikeはコンピュータ業界での20年を超えるマーケティング経験があり、うち15年は、特にストレージを中心に扱ってきました。Adaptec、EMC、Hewlett Packardに在職後、NetAppに入社し、以来4年以上当社で勤務しています。また、Fibre Channel Industry Association(FCIA)のマーケティングに関する議長も務めています。

Ahmad Zamer氏
シニア・プロダクト・マーケティング・マネージャー
Brocade

Ahmad氏はコンピュータ業界での25年を超える経験があり、特にネットワーク・テクノロジとコンピュータ・ストレージ・テクノロジを専門にしています。PhilipsとIntelに在職後、Brocadeに入社しました。テクニカル・ライターを務めており、彼の名前で発表された記事は50以上に上ります。

 
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