NetApp Tech OnTap
データセンターの効率性を高める
~不況の時代における技術革新と成功~

IT機器(サーバ、ストレージ、ネットワーク)1,000ドル当たりの電力所要量は、2005年の水準と比べると4~6倍に増加しています。そのため、データセンターの運営において、「目に見えない」部分でコストが急騰しており、このまま行くと深刻な問題になります。必然的に企業データセンターは、電力密度および資産の利用効率という点で、今よりもはるかに効率化する必要に迫られています。

これらの資産の利用効率を改善しないまま最新のテクノロジを導入すると、電力消費量が膨大になる(企業に莫大なコストが発生する)可能性があります。さらに重要な点として、データセンターの利用効率を上げなければ、必要な電力や冷却機能をまかなえないために、最新のテクノロジをサポートできなくなる可能性もあります。実際、ヨーロッパと米国では42~43%のデータセンターで、すでに電力消費量が逼迫しています。この記事では、この問題について少し詳しく検証した後、効率性を高める方向でデータセンターとITの慣例を変える方法を説明し、これらの変更が、ストレージ管理者にどのような意義をもたらすかを示します。

目に見えないITコスト

大企業クラスのセカンダリ用途のデータセンターで低コストのサーバを導入する場合、電力供給および冷却にかかる直接コストは、1年間で8,300ドルに達する可能性があります。関連する運用コストは、投資支出の償却、電気工事、サイト運営(セキュリティなど)を含めて、年間約1,320ドルです。

ほとんどのIT部門では、サーバを新しく導入する際、業務上の正当な理由付けに、これらのコストを含めていません。それどころか、データセンターで電力不足が発生するまで、電気料金の請求書を見ようともしないIT部門がほとんどです。したがって、このような隠れたコストがあるという事実さえ認識されていないのが実情です。

これらのコストは目に見えないため、データセンター管理者には、この部分を減らそうという動機付けが不足しています。現在の成長率がこのまま続くと、データセンターの電力需要を満たすために、米国だけでも10箇所以上の発電所を新設(1箇所につき費用は20~60億ドル)する必要に迫られると予測されています。

米国とEUの企業に関する調査から、以下の結果が明らかになっています。

  • 47%の企業がサーバ利用率を監視していません。
  • 55%のデータセンター管理者が、毎月の電力コストを把握していません。
  • EUの43%のデータセンターで電力供給が逼迫しています。
  • 米国の42%のデータセンターが今後18~24カ月で電力不足に陥る見込みです。

データセンターの将来に備え、見えないコストを抑制するには、電力効率と資産の利用効率を高めることが重要です。それによって、必要な機器の数を少なくするとともに、機器を購入するペースを遅くします。この目標は、次の対策によって達成できます。

  • 高い電力密度に対応する施設設計
  • コア・ネットワークの再設計
  • サーバとストレージの仮想化による、アプリケーションの拡張性と円滑な移動能力の向上

NetAppは、自社データセンターの効率化プロジェクトを通じて、これら3つの項目に関して豊富な経験を蓄積しています。

データセンター施設の再設計による効率と密度の向上

NetAppデータセンターの効率と密度を上げるには、これまで当然と思われてきた多くの事項について、根本的に見直す必要があると私たちは考えました。効率向上に向けた取り組みの中で次のような改善を行いました。

  • 施設管理とIT戦略は通常、それぞれ別の機能と見なされています。しかし、これらを結び付ければ、よりエネルギー効率の高いソリューションを作成できることが判明しました。
  • データセンターの上げ床は、メインフレーム時代の名残です。コールド・アイル(冷気通路)とホット・アイル(暖気通路)を明確に分けることによって、電力と冷気を無駄なく供給し、エネルギー効率をはるかに高めることが可能になります。
  • ハイテクの問題がローテクの方式で解決されることもあります。ビニール製のカーテンを使って、ホット・アイルとコールド・アイルを物理的に仕切ると、年間100万キロワット時以上の節約につながる可能性があります。
  • データセンターを凍えるほど寒くする必要はありません。NetAppでは、供給空気の温度設定を52ºF(摂氏約11度)から70ºF(同約21度)まで徐々に上げていき、ホット・アイルを95ºF(同約35度)という高温のままにしています。その結果、冷却の必要性が少なくなり、外気を利用した自然冷却の時間が長くなっています。

データセンターの効率の重要な指標の1つが、「電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)」です。これは、施設全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値です。一連の電力消費源を図1に示します。

図1)電力消費源

図1)電力消費源

現在の基準では、PUEが2.0ならデータセンター設計に問題はないとされています。つまり、IT機器による電力消費が、データセンター内のその他のすべての電気製品による電力消費と等しい状態です。PUE以外に重要なデータセンターの効率の指標は次のとおりです。

  • ラック単位で供給可能な電力量。現在、一般的な値は約3キロワットです。言い換えると、ラック1基に搭載された機器は、最大3キロワットの電力を利用できます。
  • ラック単位で必要なスペース。一般的なデータセンターでは、ラック1基に28平方フィート(2.52平方メートル)ものスペースが必要な場合があります。

NetAppでは、上記のようなテクニックを採用して、各データセンターのPUEを基準の2.0よりもはるかに低い水準に抑えると同時に、ラック単位での電力供給を増やし、スペースを節約することに成功しています。

たとえば、NetAppの第2世代データセンター設計では、可変風量(VAV)制御装置とコールド・アイル・ダンパーを使用して、1.40というPUEを達成すると同時に、801基のラックにそれぞれ3.5キロワットの電力を供給しています。その結果、同じデータセンターをPUE 2.0で運営する場合と比べて、NetAppは年間約170万ドルを節約しています。

図2)NetAppの第2世代データセンター設計

図2)NetAppの第2世代データセンター設計

NetAppの第3世代設計では、PUE 1.30で、801基のラックにそれぞれ8キロワットの電力を供給し、PUE 2.0の場合と比べて、年間430万ドルを節約しています。また、現在NetAppで準備中の新しい複合型IT/エンジニアリング・データセンターでは、それぞれ12キロワットを供給可能なエンジニアリング・ラック1,800基を使用する予定であり、PUEは1.20と予測されています。このデータセンターから排出される熱気は、冬季にはオフィス・スペースの暖房に利用されます。

図3)NetAppの第3世代データセンター設計

図3)NetAppの第3世代データセンター設計

データセンターの効率性向上に向けたNetAppの戦略について、詳しくは最近のTech OnTap記事および最近のホワイトペーパー(英語)をご覧ください。

データセンターの効率性と密度の向上は、大前提に過ぎません。それと同時に必要なのは、データセンターで使用するIT資産の利用率を大幅に引き上げることです。それには、コア・ネットワークの再設計、可能な限り多くのリソースの統合、サーバとストレージの仮想化が必要です。Cisco Unified Compute System(UCS)とNetApp®ユニファイド・ストレージを組み合わせて使用し、完全なデータセンター仮想化を実現するアプローチについては、今月号の別の記事(英語)で紹介されています。

コア・ネットワークの再設計

コア・ネットワークに関しては、次の2つの目標があります。

  • ユニファイド・ネットワーク・ファブリックでの標準化
  • ネットワークの再設計による、アプリケーションの「ボックス化」の廃止

コンバージド・ネットワーク・アダプタ(CNA)とFibre Channel over Ethernet(FCoE)の出現によって、既存のファイバチャネル(FC)デバイスを1つのネットワーク・ファブリックに組み込むことが可能になっています。個別のストレージ・ネットワーク・インフラをなくすことで、データセンターの電力消費をさらに削減できます。1回だけ配線を行えば、あらゆるネットワーク(SAN、LAN、HPC)に接続することができ、新しいアプリケーションやサービスの迅速な導入が可能になります。

ほとんどのネットワーク設計では現在、セキュリティやパフォーマンス上の理由から重要なビジネス・アプリケーションをそれぞれ分離しています。不都合なことに、この状態ではITリソースが局所化され、利用率に限界が生じます。ネットワークを開放すれば、すべてのホストをすべてのストレージ・ターゲットにマウントすることが可能になります。その結果、ストレージの統合と利用率の向上が促進され、サーバとストレージを完全に仮想化するための基盤が確立されます。

あらゆるリソースを仮想化

コア・ネットワークの再設計によって、サーバとストレージの仮想化から最大のメリットを引き出すことが可能になります。既存のリソースを完全に統合し、リソース・プールを任意のアプリケーションに効率よく関連付けることができます。データセンター内の(または別のデータセンターにある)任意のリソースに、アプリケーションを自由に移動できるので、ダウンタイムが大幅に短縮されます。

NetAppでは、古いサーバとストレージを積極的に統合しています。たとえば、社内のエンジニアリング・ラボを検証した結果、4,600台のx86クライアント・サーバが仮想化の候補として特定されました。これらのシステムが消費する電力/冷却コストは年間約140万ドル、データセンター・スペースは192ラックに上っていました。20:1の比率で完全に仮想化した結果、システム数が230サーバに減少し、年間の電力/冷却コストは7万ドル、スペースはわずか10ラックまで削減されました。最近のTech OnTap記事では、あるエンジニアリング・ラボで実施した、このようなプロジェクトの初期フェーズについて説明しています。

別のTech OnTap記事では、NetAppのあるデータセンターでのストレージ統合の取り組みを紹介しています。このプロジェクトでは、次のような結果が得られました。

  • ストレージ利用率が平均60%に向上
  • ストレージ・フットプリントが24.83ラックから5.48ラックに減少
  • 50基のストレージ・システムをわずか10基に置き換え
  • 直接的な電力消費量を毎月4万1,184キロワット時ずつ節約
  • キャパシティとパフォーマンスの大幅な向上

ホワイトペーパー「ストレージの効率化によるデータセンターの電力消費量の削減」で、一般的なアプローチを解説しています。

NetAppの多くのお客様が、それぞれのデータセンターで同様の成果をあげています。たとえば、ある大手の通信会社の場合、3,103台の物理サーバを統合して134台(23:1)に減らし、ストレージ利用率を25%から70%に引き上げると同時に、電気料金を年間225万ドル節約し、660基のラックと8,500個のポートを解放しています。また、このプロジェクトでは、わずか8カ月で投資を回収し、即日のサーバ・プロビジョニングを可能にするとともに、バックアップ時間を従来の96時間から30分未満に短縮しています。

ストレージ管理者にとっての意義

仮想化された大規模な共有型エコシステムへの移行は、ストレージ管理者に重要な意義をもたらします。サーバとストレージが、どこからでも(データセンターの外部からでも)アクセス可能でなければならないため、管理者としては、これまでとは違った対処が必要になります。私はNetAppのITマネージャであるJessica Yuに、彼女の実際の体験に基づいて、どのような利点があるかを質問してみました。

専用型の環境とは異なり、仮想化環境では、技術的な環境に存在するすべてのリソースを利用できます。一般に問題となるのは、パフォーマンス、ストレージ容量、拡張性、耐障害性、アプリケーション依存関係の複雑性、そしてアプリケーション、サーバ、ストレージおよび情報を追跡する方法です。

共有型ストレージには、次のような利点があります。

  • 容量の節約:リソース割り当てに柔軟性がもたらされ、組織全体でリソースを活用できるようになり、キャパシティ・プランニングが容易になる結果、ストレージ所要量が大幅に削減されます。
  • 管理の容易さ:管理や保守の対象となる物理マシン数が減ることによっても、環境全体が簡素化し、保守コストが削減されます。簡素なアーキテクチャは、標準化と高度な自動化につながります。
  • 耐障害性:共有型ストレージ環境には、ハードウェア・コンポーネントの障害に対応できる冗長性が組み込まれています。
  • ストレージ効率の向上:ストレージ環境を仮想化した結果、すべてのアプリケーションでシン・プロビジョニングを利用できるようになります。また、標準化によって、同じストレージに重複するデータが並存する状況が増えたので、そのデータを重複排除し、さらに削減効果を高めることができます。

共有型ストレージでは、すべてが標準化されます。したがって、ストレージを必要とするプロジェクトの計画立案、調達、実装を、従来よりもはるかに簡単かつスピーディに実行できるようになります。当社では以前、ストレージが複数のサイロになっていました。しかし、この方式では、データセンター・リソースにも管理者の作業時間にも無駄が多く、データセンターの拡張計画は悪夢のようでした。

  • 以前はストレージの増設について検討するのに何週間も費やしていましたが、今では月例ミーティングでキャパシティ・プランニングに対応できます。
  • 以前はプロジェクト・チームとストレージ設計について何日も協議していましたが、今では、わずか数時間で要件を把握し、設計テンプレートを確認できます。
  • 以前は新しく実装するアプリケーション用に、すべてのストレージ・システムから空いているキャパシティを探し出すのに数時間を要していました。今ではわずか数分で空き容量をチェックし、適切なリソースを特定できます。
  • 仮想化環境では、作業が容易です。そのため、従来はレベル3のサポート・スタッフが担当していた業務を、レベル2のスタッフが担当できるようになります。
  • VMware®環境用にSnapManager® for Virtual Infrastructure(SMVI)を実装した結果、Snapshot™コピーの作成やファイルのリストアなどの多くの作業をシステム管理者に任せられるようになり、ストレージ管理者が1つ1つの作業に介入する必要がなくなりました。

このような省力化による時間的な節約効果は、複数の部課を合計すると数週間分の仕事量に相当します。それと同時に、ユーザ・コミュニティへのサービスが改善されています。

まとめ

横ばいあるいは減少傾向にあるIT予算とIT機器の電力消費量の増加という条件下で、今後も引き続きビジネス・ニーズを満たしていくためには、データセンターを大幅に効率化する必要があります。この記事では、データセンター・インフラの電力効率を上げ、ITリソースの利用率を最大化する方法をいくつか紹介するとともに、これらの方法を実践した場合の意義について説明しました。

その他にもITに著しい影響を与える、さまざまなイニシアティブがあります。これらのトピックについての詳細は、今月のTech OnTap特別号に掲載されている「クラウド・ストレージ」および「CiscoとNetAppのパートナーシップによるデータセンター・インフラ(英語)」に関する記事をご覧ください。


Dave RobbinsDave Robbins
IT担当チーフ・テクノロジ・オフィサー、NetApp

Daveは1979年以来、IT技術者として活動し、多くのテクノロジの進化に携わってきました。そうした経験が、データセンターの効率性と新しいクラウド・テクノロジに関する鋭い見識に表れています。

DaveはNetApp社内ITで使用する新しいテクノロジの選択と、導入ロードマップの策定を統括する立場にあります。NetAppのIT部門におけるNetAppテクノロジの利用が、確実にベストプラクティス・モデルの役割を果たせるようにするために、最善を尽くしています。


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