NetApp Tech OnTap
最適なバックアップテクノロジの選択

NetAppといえば「プライマリストレージ」という印象が強いようです。その印象は間違いではありませんが、NetAppはバックアップおよびリカバリソリューションの設計と実装に関しても世界的に豊富な実績があり、大規模なデータセンターから、ITスタッフが限られた小規模なリモートオフィスまでを手がけた経験があります。Fortune 100企業の60%以上では、データの長期保存にNetAppストレージを採用しており、何千社という企業のバックアップおよびリカバリ環境でNetAppが使用されています。当社はデータ保護に関するさまざまな難問を解決するために、ITチームによるソリューションの選択と実装を幅広く支援してきました。
この記事では、以下について考察します。

  • 今日のバックアップとリカバリに関する課題
  • それらの問題を解決する、さまざまなバックアップテクノロジ
  • 特定のソリューションの選択条件

以下では、より良いパフォーマンスの実現とコスト抑制とのバランスを保ちながら、新たなテクノロジを活用する方法について検討します。まず、バックアップおよびリカバリで生じる問題の原因を示し、一般的なソリューションクラスについて説明してから、選択基準について説明します。次に、NetApp Virtual Tape Library(VTL:仮想テープライブラリ)ソリューションやNetApp SnapVault®など、NetApp®バックアップ製品を具体的に紹介します。

 
長所
短所
従来のテープ 慣れ親しんだ運用方法とテクノロジ 複雑性の増大、低い信頼性
従来のディスク 信頼性とリカバリ能力の向上 プロビジョニングの難しさ、高コスト
仮想テープ 導入および拡張の容易さ、ディスクによる優れたバックアップパフォーマンス 既存のテーププロセスへの依存
レプリケーションベースのバックアップ より頻繁なバックアップ、長距離でのレプリケーション、ストレージ効率の向上 バックアップとは異なるアプローチを使用

図表1)さまざまなバックアップおよびリカバリ方式の長所と短所

従来のバックアップとリカバリの課題

規模の大小を問わず、ほとんどの組織では、次のような共通の問題に直面しています。

  • 許容されるバックアップウィンドウ内に毎晩のバックアップを完了できない
  • 迅速なデータリカバリが困難
  • 信頼性の問題のためにリストアが失敗する

ブランチオフィスおよびリモートオフィスの状況はさらに複雑で、そのほかにも次のような問題があります。

  • バックアップが正常に終了しないことが多い
  • オフサイトの災害対策の信頼性が低い
  • スタッフが多忙のため、テープストレージやバックアップアプリケーションの複雑性に対処しきれない
  • 標準化が行われておらず、運用面での可視性に限界がある

テープテクノロジは、バックアップウィンドウやリカバリ時間を長引かせるとともに、信頼性の問題の原因となり、従来のバックアップ環境に悪影響を及ぼしかねません。

  • 読み取りまたは書き込みを開始するにあたって、テープを配置してテープヘッドの位置合わせをするだけでも、最大3分かかる場合があります。これはあくまで、ライブラリに適切なテープがあることが前提です。
  • 複数のテープにわたるバックアップまたはリストア作業では、テープを取り替えるたびに同様の準備時間がかかります。
  • テープドライブとの間のデータ転送速度が遅いと、テープドライブでは何度も位置合わせをやり直す「シューシャイニング現象」が発生し、大幅な処理遅延につながります。最近のほとんどのテープドライブには、この現象を軽減するステッピングアルゴリズムが組み込まれていますが、パフォーマンスへの影響がすべて解消されるわけではなく、バックアップウィンドウやリカバリ時間を長引かせる原因になります。

リカバリに関して言えば、テープの信頼性が重大な問題となることも多く、処理速度の低下や不確実性を招く要因になっています。テープはパッシブ(受動的)なメディアです。データが書き込まれたテープは、再び必要になるまでライブラリのスロットに保管されているだけで、正常な状態であるかどうか常に監視されるわけではありません。テープに問題があっても、そのテープを再び使用するまでは問題は判明しません。テープを次に使用する機会がリストアである場合、たとえリストアを完了できたとしても、実行には非常に長い時間がかかる可能性があります。

ディスクの経済性について

全体的なデータ保護ストラテジーにディスクバックアップを追加することで、このような問題の多くが解決される可能性があると聞いて、意外には思われないかもしれません。ディスクソリューションはパフォーマンスを向上させるとともに、テープ特有のロード/アンロード/シークによる遅延や、「シューシャイニング現象」によるスループットへの悪影響を解消できます。バックアップ環境に固有のニーズを評価する方法については、こちらをご覧ください。

リカバリについては、パッシブなテープメディアで起こる信頼性の問題が、ディスクソリューションを使用することでほとんど解消されます。定期的なメディアスキャンなどのテクノロジによって、ディスクが継続的に監視されるためです。問題が発生しても、重要なファイルまたはサーバをリストアしなくてはならなくなる前に、前もって問題を発見できる可能性がはるかに高くなります。さらに、リストア中にメディアエラーが発生した場合、RAID保護によってエラーを解決できます。

ここで必然的に、パフォーマンス対コストが問題になります。TBあたりのテープの単価が、TBあたりのディスクの単価よりも依然として安いのは事実です。ただし、ディスクにはコストを抑える方法があります。多くのソリューションには圧縮テクノロジが含まれています。また、新しい重複排除テクノロジにより、ディスクバックアップとテープバックアップのコスト差は大きく変化する可能性があります。

圧縮は、テープドライブの場合と同様、データ量を削減して全体的なストレージ所要量を少なくします。重複排除機能では、より高度なアルゴリズムを使用することで、データ削減率をさらに高めます。バックアップは性質上、多くの重複データが含まれているのが一般的です。フルバックアップを実行すると、そのたびに前回のバックアップとほとんど同じファイルがバックアップされます。大部分のファイルでは、変更箇所はごくわずかな部分しかありません。増分バックアップを行う場合にも、最後のバックアップ以降、ほんのわずかしか変更されていないファイルが多く含まれていることがあります。重複排除機能を利用すると、最大20:1(95%)のスペース節減が可能になり、図表2に示すように、テープを使用する場合と比べてディスク所要量が大幅に削減されます(Tech OnTap 7月号の関連記事では、バックアップ環境における重複排除機能の信頼性について説明しています)。


















図表2)標準的な環境における重複排除済みのバックアップと従来のテープ/ディスクバックアップの比較

当然のことながら、各環境のデータ保護ストラテジーによっては、依然としてテープが重要な役割を担う可能性があります。ただし、その有用性は従来よりも減少しています。ほとんどのリストアがバックアップ後1週間以内に行われるような環境では、小容量のディスクストレージをフルに活用し、重要度の低いデータとオフサイトストレージについては引き続きテープを使用することができます。

ディスクベースソリューションという選択肢

ディスクベースバックアップのハードウェアには、次の2つの選択肢があります。
  • VTL(ディスクアレイを使用して、テープライブラリの特性をエミュレートします。)
  • 従来のディスクアレイ

VTLの利点
VTLには次のような利点があります。

  • 大幅な変更を行うことなく既存のバックアップインフラに統合できるため、導入が容易
  • 物理テープおよびライブラリに特有の信頼性の問題を解消
  • バックアップパフォーマンスを最大化するために最適化済み
  • データをオフサイトに送る場合に、物理テープへの移行が容易

従来のディスクの利点
従来のディスクソリューション(LUNを使用するSANソリューション、またはNAS)も優れた信頼性とパフォーマンスを提供しますが、VTLのような特殊性はありません。従来のディスクによる利点は次のとおりです。

  • 標準的なディスクインターフェイスを通じて、慣れ親しんだ方法とツールを使用できるため、データの管理が容易
  • 一般的なディスクストレージにもバックアップ機能にも使用可能(パフォーマンス要件による)
  • レプリケーションベースのテクノロジを利用した災害対策およびバックアップ/リカバリに対応

レプリケーションベースのバックアップとリカバリ

レプリケーションテクノロジはVTLと併用することも可能ですが、現時点ではあまり頻繁には使用されていません。その理由は、バックアップイメージとすべての複製コピーの正確な位置を反映した、バックアップアプリケーションカタログを最新の状態に保つ必要があるためです。こうした技術については、VTLベンダー各社(および一般のストレージベンダー各社)によるバックアップアプリケーションとの統合が進み、より付加価値の高いサービス(SnapVault for NetBackup™はその一例です)が提供されるようになるにつれて、今後2~3年の間に大きく進歩するでしょう。

ディスクアレイ製品の場合、レプリケーションテクノロジの最も一般的な用途は災害対策です。アレイレベルまたはOSレベルで複製を実行すると、データセットが同期的またはほぼ同期的に複製され、システム障害またはサイトレベル障害からの復旧が可能になります。これは厳密な意味ではバックアップとリカバリ(リカバリ用に複数のpoint-in-timeイメージを提供する)ではありませんが、こうしたレプリケーションを行うことで、独自の可能性への道が開かれます。

Snapshot™テクノロジとレプリケーションを統合すると、高速かつ低オーバーヘッドのバックアップとリカバリが実現されます。実装にはさまざまな方法がありますが、最終的な目的は、変更されたデータを(アレイレベルまたはサーバレベルで)ソースシステムからターゲットシステムに複製したあと、Snapshotコピーを使用してバックアップイメージを生成することです。これには、3つの重要な利点があります。

  • 転送するデータ量が少ないため、バックアップとリストアのパフォーマンスが向上する
  • 各バックアップでは、ファイル全体ではなく変更されたブロックだけが保存されるため、ストレージ使用量を削減できる
  • 限られた量のデータしか転送する必要がないため、効率的なWANバックアップが可能

上記の結果、バックアップとリカバリに関して、パフォーマンスの向上、使用帯域幅の削減、スペース効率の向上が可能になります。ベンダーによっては、テープと統合することもできます。

NetAppソリューション

NetAppは、あらゆる条件をカバーするディスクベースバックアップソリューションを提供しています。ハードウェア製品にはVTLとFASストレージシステムの2つがあり、レプリケーションベースのバックアップソリューションであるNetApp SnapVaultも提供しています。

NetApp NearStore VTL
NearStore VTL製品ラインには、3つのモデルがあります。フラッグシップモデルであるNearStore® VTL1400は、最大672 TBの容量(未フォーマット時。圧縮時は1,100 TB)、最大2.5 GB/秒の平均書き込みスループットを提供します。すべてのモデルで、ハードウェア圧縮、パフォーマンスを最適化するセルフチューニング、物理テープの利用効率を高めるスマートサイジング、および物理テープがオフサイトで保存されている場合にもリストアを実行できるシャドウテープなどの機能を利用できます。エントリレベルのシステムは、上位モデルに現場でアップグレードできます。

NetApp FASストレージ
NetApp FASストレージシステムは、ハイパフォーマンスなFCディスクと、経済的なSATAディスクの両方を1つのアレイでサポートします。1つのシステムにプライマリストレージとセカンダリストレージを共存させることも、SATAのみのシステムを作成してバックアップに使用することも可能です。FASストレージシステムを使用すると、NetApp RAID-DP®、Snapshot、重複排除機能、FlexShare™によるQuality of Service(QoS)など、NetApp Data ONTAP®運用環境の実績ある諸機能を即座に活用し、バックアップの保護と管理を行うことができます。

SnapVault
NetApp SnapVaultファミリーは、特にリモートオフィスでのデータ保護を強化および簡易化するために設計された、レプリケーションベースのバックアップおよびリカバリソリューションです。SnapVaultではNetApp Snapshotテクノロジを活用して、ブロックレベルでシステムのバックアップとリストアを実行します。SnapVaultはシステム上の(変更されたファイルではなく)変更されたブロックだけを識別し、セカンダリストレージに複製します。これにより、バックアップおよびリストア処理中に転送されるデータ量が減少し、バックアップの保存に必要なストレージ容量が削減されるため、必要に応じてバックアップの実行頻度を上げることができます。調査によれば、バックアップ時間およびリストア時間ともに、平均95%の時間短縮が可能です。この方式では、限られた量のデータしか転送されないため、リモートサイトから主要データセンターに直接バックアップを実行することもできます。

image3















図表3)SnapVaultによるディスクベースバックアップとテープの比較

Oracle®、Microsoft® Exchange、SQL Server™など、重要なデータベースやアプリケーションに関して一貫性のあるバックアップとリストアを実現するため、NetApp SnapManager®製品スイートをSnapVaultと併用することもできます。

NetApp以外のストレージについては、Open Systems SnapVaultを使用すると、SnapVaultの独自機能の利点を活かしながら、スタンドアロンサーバや種類の異なるストレージシステムを統合できます。Tech OnTap 7月号の関連記事では、Open Systems SnapVaultによるVMware®環境の保護について詳しく説明しています。

過去にTech OnTapに掲載したSnapVault関連の記事を読み逃した方のために、お客様の導入事例に関する最近の記事を紹介します。
  • Experts OnTapの特集記事では、あるITチームがさまざまなバックアップオプションを評価した過程を紹介しています。SnapVaultに関するNetAppの専門技術者との詳しいQ&Aも掲載されています。
  • Agilent Technologiesにおける、SnapVaultを使用したディスクベースバックアップへの移行について、お客様自身によって書かれた体験談をご覧ください。

適切な選択を行うために

使用可能なバックアップテクノロジの中から1つを選ぶのには勇気がいりますが、実は、いくつかの簡単なガイドラインに従うだけで、適切なソリューションを選択できるのです。まず第1段階として、最も簡単なところから選択を始めます。対象となる環境はデータセンターでしょうか、それともリモートオフィスでしょうか。

データセンターには通常、バックアップとリカバリに関して知識を持った専門のITスタッフがいます。当然、ある程度はテープを利用した経験があるため、管理者によって、テープの使用に関するベストプラクティスが作成されています。さらに、コンプライアンス基準を満たすため、オフサイトでのテープの保管が義務付けられているはずです。ほとんどのデータセンターは、各ビジネスユニットのニーズに応えるために、次のような要件を満たす必要があります。

  • ベストプラクティスへの統合と、テープへの容易なデータ移行
  • 目標のリストア時間やバックアップウィンドウをクリアするためのパフォーマンスの拡張性
  • バックアップとリストアの実行を保証する信頼性
これらのニーズに応えるには、VTLが最良の選択肢です。バックアップ用に最適化され、従来のテープインターフェイスを提供するVTLは、パフォーマンスと拡張性を兼ね備え、既存のベストプラクティスへの統合を可能にします。VTLでは、バックアップアプリケーションによる処理や付加価値テクノロジを利用することで、データをテープへと簡単に移行して、オフサイトで長期保存できます。

従来のディスクソリューションも、提供される付加価値サービスによっては検討する価値があります。コストが優先される環境では、重複排除や、バックアップアプリケーション固有のデータ削減機能が非常に高く評価される傾向にありますが、各機能のパフォーマンス性能を忘れずに確認してください。VTLが提供する最適化された機能やインターフェイスがそれほど重要でなければ、こちらの方法が適している可能性があります。ただし、繰り返しますが、どのソリューションについても、パフォーマンス、コスト、および拡張性に関するすべての性能を確認することが重要です。

リモートオフィスでは、状況はやや異なります。データ保護を担当するスタッフがいないか、いたとしても数が限られていることが多いため、バックアップを簡単に実行できるように、できるだけ複雑性を解消することが重要になります。それには第一に、テープの利用を廃止するか大幅に削減して、設定および管理のオーバーヘッドを減らすとともに、メディア管理の複雑性とコストを低減する必要があります。ディスクソリューションの簡易性だけでなく、重複排除などのコスト節減機能にも着目する必要があります。

さらに、バックアップアプリケーションへの依存度を抑えるため、レプリケーションベースのデータ保護を実装して、ディスクバックアップを強化するのも良いでしょう。バックアップアプリケーションは工夫を凝らした豊富な機能を備えていますが、運用には高度な知識が必要であり、実際には必要のない機能も多く含まれています。オフサイトで保管するためのテープ作成やカタログ化などの作業を、データセンターで集中的に処理する場合はなおさらです。リモートオフィスのバックアップアプリケーションを廃止して、長期保存に関する作業をデータセンターに一元化すれば、データ保護の複雑性や、データ損失および法規違反の可能性を大幅に減らすことができます。また、レプリケーションベースのデータ保護機能を併用すると、ブロックレベルの増分に基づいてバックアップが実行され、変更されたブロックだけを転送および保存できるため、さらなるストレージ所要量の削減とバックアップの高速化が可能になります。最も効果的なソリューションを実現するために、レプリケーションベースのデータ保護を導入し、リモートから主要サイトへとデータをバックアップする方法を検討してみてください。

高コストだという理由からディスクベースバックアップの導入を躊躇していた方は、この機会に再検討をお願いします。最新の重複排除テクノロジを利用すると、テープとディスクのコスト差を大幅に縮小することができ、複雑性の軽減によって、管理コストも削減できる可能性があります。NetAppはバックアップに関するあらゆる問題の解決を目指して、さまざまなハードウェアとソフトウェアを提供しています。バックアップベンダーとしてNetAppを検討したことがない方は、ぜひご再考ください。

David Chapa David Chapa
バックアップおよびリカバリソリューション担当ディレクター
NetApp

Davidは20年以上の業界経験があり、専門分野はデータ可用性、データ災害対策、およびビジネス復旧プラクティスです。共著に『Implementing Backup and Recovery: The Readiness Guide for the Enterprise』があり、バックアップとリカバリ、災害対策、およびビジネス復旧プラクティスの専門家として定評があります。

関連情報