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ストレージ自動階層化とNetAppの
バーチャル・ストレージ・ティア

ストレージ自動階層化(AST)テクノロジは、コストと複雑性を最小限に抑えた上で、フラッシュベースのメディアによるパフォーマンスの向上という利点をデータセンターで実現することを目的としています。ソリッド・ステート・ディスク(SSD)コントローラベースのフラッシュなど、フラッシュベースのデバイスでは、最速のハードディスクドライブ(HDD)に比べて、1秒当たり25~100倍のランダムリード処理を実行できますが、このパフォーマンスを実現するには、ギガバイト当たり15~20倍のコストがかかります。HDDの容量は継続的に改善されていますが、1ドル当たりのIOPSパフォーマンスについては、あまり変化がありません。Flashテクノロジは、1ドル当たりのIOPSを大幅に改善するだけでなく、遅延も低減します。

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図1)種類が異なるソリッドステート / 回転メディアのランダムリードの効率の比較(対数の尺度を使用)。異なる種類のHDD間では、1ドル当たりのIOPSにあまり差がない

ストレージ自動階層化では、データセット全体を常に高価なメディアに配置するのではなく、アクセス頻度の高いデータを識別して高性能のストレージメディアに保存し、アクセス頻度の低いデータはより低速で低価格のメディアに保存します。

NetAppは、最適なソリューションの設計を目指し、ASTで対応しなければならない問題の把握に多くの時間を費やし取り組んできました。

この記事では、以下について説明します。

  • ASTテクノロジの検討基準
  • ASTに対する移行ベースとキャッシングベースのアプローチ
  • NetApp®のバーチャル・ストレージ・ティア - ASTに対するキャッシングベースのアプローチ

ASTテクノロジの検討基準

I / Oの観点から見たASTの主な目的は、できるだけ多くのランダムI / Oを高性能メディア(フラッシュ)に移行し、HDDにかかるランダムI / Oの負荷を最小限に抑え、平均遅延時間を短縮することです。HDDはシーケンシャルI / Oには適しているため、HDDと比較した場合、フラッシュのコストパフォーマンスにおけるメリットは、シーケンシャルリード / ライトではそれほど大きくありません。そのため、ランダムI / OとシーケンシャルI / Oの違いが重要となります。

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図2)種類が異なるソリッドステート / 回転メディアのシーケンシャル・スループットの効率の比較

上記の目的を実現するASTソリューションの機能に影響を及ぼす要素はいくつかあります。

  • データ配置の単位:処理対象のデータブロックが小さいほど、システムやHDDのリソースをより効率的に使用してデータを配置できます。また、アクセス頻度の低いデータとアクセス頻度の高いデータが「ひとまとめ」にされ、せっかくの高価なメディアが無駄に消費されるという状況を防ぐことができます。
  • アクセス頻度の高いデータの識別方法と処理の高速化:アクセス頻度が高いデータをフラッシュにすばやく移動できれば、比較的短時間のI / O処理の増加に対応できない可能性が低くなります。また、必要となるHDDのI / Oを削減でき、平均遅延時間の大幅な改善につながります。

運用面では、さらにいくつか考慮すべき要素があります。

ソリューションの導入と管理の難易度:導入に大幅な設定変更を伴うASTソリューションや、監視や管理に手間のかかるASTソリューションでは、目的の達成が難しくなります。

ソリューションと使用中の他のストレージテクノロジ(バックアップ、重複排除、シンプロビジョニングなど)との統合:ソリューションを導入した後で、現在使用しているバックアップ機能が使用できない、あるいはすべてのデータを移行する必要があるといったことが判明するのは避ける必要があります。

移行またはキャッシングによるAST

ASTには、移行とキャッシングという根本的に異なる2つのアプローチがあります。

移行ベースのASTは、データ移行のプロセスを自動化します。データブロックが「アクセス頻度が高い」と判断されると、そのデータブロックは高速メディアに移動され、アクセス頻度が下がると、低速のメディアに再び移動されます。フラッシュへ移動するときも、フラッシュから移動するときも、HDDへのアクセスが必要です。

キャッシングベースのASTは、一般的なキャッシング手法を使用して、アクセス頻度の高いデータを高性能メディアに「昇格」させます。データのコピーはHDDに残るため、データへのアクセス頻度が下がった場合、データはキャッシュから解放されるだけで、HDDのI / Oは必要ありません。

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図3)キャッシングベースと移行ベースのストレージ自動階層化

NetAppのバーチャル・ストレージ・ティア

NetAppは、前述の検討基準を踏まえてASTに対するこの2つのアプローチを検討しました。その結果、基準を達成するにはキャッシングベースのASTのほうが優れているという結論に達しました。

また、NetAppでは、Write Anywhere File Layout(WAFL®)により書き込み処理をシーケンシャルな書き込みに効率的に変換できるため、読み取りパフォーマンスの最適化に集中的に取り組むことができました。図2に示すとおり、HDDはシーケンシャルライトには適しています。詳細については、Mike RileyとTech OnTap®の担当者であるJohn Fullbrightが最近投稿したブログ(英語)で説明されています (これは、NetAppのデュアルパリティRAID[RAID-DP®]の書き込みパフォーマンスが優れている理由でもあります。他のRAID 6実装では同等の書き込みパフォーマンスは実現できません)。

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図4)キャッシングベースのストレージ自動階層化を採用したNetAppのバーチャル・ストレージ・ティア

NetAppのバーチャル・ストレージ・ティアは、HDDのI / Oオーバーヘッドを最小限に抑えた上で、アクセス頻度の高いデータをキャッシュに昇格させます。ボリュームまたはLUN上のブロックの読み取り要求が受領されると、そのブロックは自動的に昇格の対象となります。バーチャル・ストレージ・ティアにコピーされてもブロックはHDD上に残るため、データブロックの昇格は、データ移行とは異なります。昇格は、システム・バッファ・キャッシュから直接行われるため、追加でHDDのI / Oが必要になることはありません。

データブロックは、ディスクから最初に読み取られた直後に昇格させることができるため、ディスクI / Oが増加することはありません。一方、移行ベースのAST実装では、データがディスクから何回も読み取られるか、予定されている移行が次回実行されるまで、アクセス頻度の高いデータが昇格することは通常なく、移行プロセスの実行時にディスクI / Oが増加します。

NetAppのアルゴリズムでは、価値の高いデータを価値の低いデータと区別してバーチャル・ストレージ・ティアに保持します。たとえば、メタデータは常に初回の読み取り時に昇格します。一方、シーケンシャルリードは、明確に有効にしないかぎり、通常バーチャル・ストレージ・ティアにキャッシュされません。これは、シーケンシャルリードをキャッシュすることで、価値の高いデータを保持することができなくなるためです。また、すでに述べたとおり、シーケンシャルリードにはHDDが適しているためでもあります。この動作は、固有のデータアクセス動作を持つアプリケーションの要件やさまざまなサービス要件に従って変更することが可能です。

バーチャル・ストレージ・ティアの利点

アクセス頻度の高いデータを細かい単位でリアルタイムに昇格:データブロックは通常、ディスクからの最初の読み取り時にバーチャル・ストレージ・ティアに配置されます。その後の読み取りはバーチャル・ストレージ・ティアから行われるため、パフォーマンス面のメリットをリアルタイムに得ることができます。バーチャル・ストレージ・ティアでは、読み取りの動作パターンの識別と、必要となる可能性が高いデータブロックの事前読み取りは実行されますが、ストレージのある階層から他の階層へとデータをすべて移動することはありません。そのため、HDDのI / Oや他のシステムのリソースの使用を最小限に抑えることができます。このアプローチの効率性と、ブロックを4 KBという細かい単位で処理する機能により、アクセス頻度の高いデータをリアルタイムに昇格させることができます。

移行ベースのASTでは、あるストレージ階層から他のストレージ階層へとアクセス頻度の高いデータを移行する場合、バックグラウンドタスクまたはオフピーク時にスケジュールされたタスクとして実行して、ストレージシステムにかかる負荷の増加を最小限に抑えます。移行ベースのソリューションでは、通常、処理の単位がバーチャル・ストレージ・ティアの128倍以上であるため(0.5 MBから1 GB、あるいはボリューム全体またはLUN全体)、データの移行に非常に時間がかかります。このようなアプローチでは、以下のようなケースに対応できない可能性があります。つまり、重要な処理が短時間に急増し、その時間が、アクセス頻度の高いデータを識別して昇格させるのに必要な時間よりも短いような場合です。

バーチャル・ストレージ・ティアでは、フラッシュベースのメディアを効率的に利用することで、4 KBという細かい単位に対応しています。単位の大きなソリューションでは、アクセス頻度の高いデータブロックにアクセス頻度の低いデータが多く含まれている可能性が高く、同等の結果を得るために高価なフラッシュメディアをより多く用意する必要があります。

導入や管理が容易:バーチャル・ストレージ・ティアは、既存のデータボリュームやLUNに対応します。ストレージ環境の複雑な変更や中断を伴う変更は必要ありません。また、データの移動に関するポリシー、しきい値、タイムウィンドウを設定する必要もありません。ストレージシステムにFlashテクノロジをインストールするだけで利用できます。インストールが完了すれば、ストレージコントローラで管理するすべてのボリュームでバーチャル・ストレージ・ティアが使用できるようになります。その後、優先度の低いボリュームのユーザデータを、必要に応じてバーチャル・ストレージ・ティアから除外できます。

他のASTソリューションでは、増分ポリシーやデータ分類のほか、専用ストレージプールの作成やデータの移行といった使用中のストレージインフラの構造的な変更が必要になります。

完全な統合:バーチャル・ストレージ・ティアはNetAppユニファイド・ストレージ・アーキテクチャと完全に統合されているため、NASまたはSANのいずれのストレージプロトコルも変更せずに利用できます。

また、移行ベースのASTソリューションでは、重複排除などのStorage Efficiency機能との相互運用ができない可能性がありますが、NetAppバーチャル・ストレージ・ティアは、シンプロビジョニング、FlexClone®テクノロジ、重複排除機能、圧縮機能など、NetAppのStorage Efficiency機能すべてと連携します。この緊密な統合により、お客様にメリットがもたらされ、バーチャル・ストレージ・ティアの機能が強化されます。

たとえば、ボリュームの重複排除を実行した場合、重複排除による利点はバーチャル・ストレージ・ティアでも維持されます。バーチャル・ストレージ・ティアの単一のブロックに対して多くのメタデータポインタを作成することが可能なため、キャッシュが再度読み出される確立が高まり、ブロックを昇格することの価値も高まります。このキャッシュ増強では、バーチャル・ストレージ・ティアの単一のブロックが複数の論理ブロックとして機能します。その結果、サーバとデスクトップの仮想環境にパフォーマンス面で大きなメリット(ブートストームの時間短縮など)がもたらされるだけでなく、必要なフラッシュメディアの数も削減できます。

まとめ

ASTにキャッシングベースのアプローチを採用することで、NetAppバーチャル・ストレージ・ティアは移行ベースのASTに比べてはるかに優れた利点を提供します。バーチャル・ストレージ・ティアでは、データをリアルタイムに昇格することができため、処理が短時間増加した場合でも高速化によるメリットがあります。NetAppは4 KBという細かい単位に対応し、フラッシュからアクセス頻度の低いデータを効率的に排除しているため、少ないフラッシュで優れた結果を得られます。一方、移行ベースのASTは単位が大きく、データが昇格するまでの遅延時間が長いため、多くのHDD I / Oが必要となり、高価なフラッシュベースのメディアを効率的に使用することが難しくなります。

実際には、バーチャル・ストレージ・ティアはHDDを容量階層として使用し、フラッシュをパフォーマンス階層として使用します。FC、SATA、SASなど、さまざまな種類のディスクドライブを使用している場合にも、これらすべてを容量階層として使用でき、バーチャル・ストレージ・ティアにより優れたパフォーマンスが実現します。NetAppでは、バーチャル・ストレージ・ティアを基盤とした高性能階層とSATAディスクをベースにした単一のディスクドライブ階層が、今後大半のアプリケーションに対応する最適な組み合わせであると考えています。

 ストレージ自動階層化に関するご意見をお寄せください。

ご質問、意見交換、情報提供は、NetAppのコミュニティサイトまでお願いいたします。

Paul Feresten
シニア・ プロダクト・マーケティング・マネージャー
NetApp


Paulは2005年にNetAppに入社し、Data ONTAP®、MultiStore®、FlexClone、シンプロビジョニングなど、主にNetAppのコアソフトウェアを担当しています。30年を超える業界経験の持ち主で、これまでに製品管理、営業、マーケティング、経営管理を経験してきました。NetAppに入社する以前、PaulはData General、Digital Equipment Corporation、MSI Consulting、SEPATONで勤務していました。



Rajesh Sundaram
テクニカルディレクター
NetApp


Rajeshは1997年にNetAppに入社して以来、WAFLファイルシステム、Data ONTAP RAIDサブシステム、FlashテクノロジとNetAppストレージの統合を担当してきました。Rajeshは、アリゾナ大学でコンピュータサイエンスの理学修士を取得しています。


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